今年の瀬戸内では、例年になく夏ごろから太刀魚の釣果が盛況です。こうした状況では、初心者の皆さんでも楽しみながらステップアップするには絶好のチャンスです。
私も久しぶりにタチウオ釣りに出かけて、釣果は27匹とまずますでした。サイズは少し物足りないながら、海の中の近年にない魚の量と活性を感じました。
タチウオは間違いなく多そうですが、それでも20名以上の乗船の中で20匹以上釣るのは数人に限られます。
この記事では、一定の釣果につながる「棚と誘いと合わせ」の重要性を改めてご説明します。
そして、なぜ今年の瀬戸内のタチウオが活況なのか、来年以降も期待できるのかを、「黒潮大蛇行の終了」と「温暖化の影響」を交えて、具体的に詳しくご紹介します。
今年はまだまだタチウオは好調で、いい日には50匹以上の釣果も余裕で狙えるみたいです。
そうした狙い目の条件もお伝えします。
まだ絶好調のタチウオ、あなたも挑戦してみませんか。
まずは、今回も安定の釣果をもたらした「タチウオ釣り」のコツ
今年の海の中の様子は、ここ数年と比べると明らかに活況でした。魚の反応が違います。つまり、明らかに太刀魚の量が多い感じです。好調の理由は記事後半で詳しくご説明します。
しかし、上位数名と下位の釣果にハッキリ差が出るのが、タチウオ釣りの面白いところでもあります。
別記事で太刀魚釣りのコツをご説明してますので、ここでは、大切なスキル、コツについて、ポイントだけ簡単にご紹介します。

太刀魚で大切なのは「棚」と誘いとアワセ
タチウオは幽霊魚と呼ばれるように、突然釣れる層が変わる魚です。そのため釣れる層を見つけたら集中してそのタナを責めるのがセオリーですが、あたりがなくなったら、幅広く探るか、情報を共有することがとても重要です。
そして、タチウオの活性状況に応じて誘い方も工夫が必要です。
そしてアタリがでたら、タイミングを測って強く短いアワセがとても重要になります。
それぞれ具体的に、釣れない理由の説明としてご紹介します。
釣れない人の特徴
釣れないのは、「アタりがない」のか、「乗せられないだけ」なのか、に大きく分類できます。
「アタリがない」場合の原因と対策
1.「棚がずれている」とアタリがないのは当然です。魚がいなところで釣っているのと同じです。
最初は底から少しづつ誘い上げ、タナを探る作業は必須です。
または、同船者に釣れた棚を聞いて、その周辺を中心に攻めるのがより効果的です。
2.「誘いがあってない」場合もアタリは出にくくなります。
自分なりの誘いを試すことは上達のために重要です(ただし、理屈を理解したうえで)。
釣れている人とタナは同じなのに、周りは釣れて自分だけアタリすら出ないときは、素直に、他の人の誘いを観察してマネするのが次善の策となります。
3.潮まわりが悪い、魚影が少ない、魚の活性も低いなど、船中みんながアタリがない状況の時もあります。
そんな状況でも、うまい人は何とかあたりを出し釣ります。しかし、その領域に達するには、エサや仕掛けにもこだわり、多くの経験も必要なのです。
「太刀魚の食いが渋い」場合は、サンマエサなどが有効な時もあるといいますが、私はイワシ以外使ったことがないのでその差はわかりません。
何をしてもダメな時は、基本は諦めるしかありません。
「乗せられない」原因と対策:アワセの極意!
タチウオは、口の中に針がかかる釣りではなく、テンヤの針を太刀魚の顔の外側から引っ掛ける釣りです。
つまり、アワセの動作ができないと、釣れる可能性は大幅に低くなります。

タチウオがエサを加えた状態で強く引いてくれると、自動的にフックされることはありますが、釣れた状態を見ればわかりますが、針は外から内側に貫通しており、通常の釣りとは全く違うことの理解が重要なのです。
大切なのは、タチウオの歯がエサをくわえているタイミングで、このアワセの動作を行わないと、「テコの原理での針がかり」ができません。
タチウオは、用心深いのでエサを加えてもすぐに離すことがとても多く、繰り返しエサにアタックして弱ったところを捕食する習性があります。
よって、タチウオがしつこくエサに執着して長めにくわえた瞬間にアワセを行うのが最も効果的なのですが、これを適切に判断するには、ある程度の慣れが必要です。この辺りでも釣果の差につながります。
そして、アワセは「強く短い」アワセが重要です。強くないと針がしっかり刺さりませんし、「短く」ないと、空振りの時に仕掛けが大きく上に抜けてしまい、タチウオの視界から完全に消えて、「アワセが次の誘いになる」効果がなくなり、自らチャンスを放棄することになります。
うまい人は、アワセのタイミングが絶妙で、しかも「強く」「短く」合わせるのです。
この辺りは、別記事で細かくご紹介していますので、興味があったらこちらも覗いてみてください。
タチウオ釣りに行くなら、釣れそうな潮まわりがおススメ
今年のタチウオは好調なのですが、それでもすごく良い日(今年だと60匹オーバーも!)と、今回の私のようにまずますの日と、全くダメな日(トップでも15匹程度とか)があります。
それは、タチウオもタコと同じで、潮の流れが速すぎるとアタリが激減して、釣果が伸びないという理由によるものです。それは強い海流では捕食が上手でないことに原因があります。
つまり、釣行日の選定が重要で、基本は小潮まわりが無難と言われています。実際にはエリアごとに海流の癖がありますし、時間帯によっては問題ないときもあります。ご自分の予定エリアの釣果実績と、潮汐票のデータで分析してみましょう。
補足情報として、その日の中でも、潮の流れがちょうどいい、俗にいう「地合い」の時間帯があります。
その時にどれだけ釣るかも重要ですので、覚えておきましょう。
黒潮大蛇行の終了に伴う、瀬戸内での「タチウオの本格化」の兆し
今年の大阪湾でタチウオの釣果が好調な理由と、小型が多い理由
大阪湾でタチウオの釣果が好調になった理由
2025年1月時点では、大阪湾のタチウオの漁獲量は例年比では少なかったそうです。
それが、黒潮大蛇行が終了した5月以降の夏場では、遊漁船でのタチウオ好調の情報を目にするようになりました。
それは、黒潮大蛇行の終了により、紀伊水道からのプランクトンやエサの小魚の流入増加に伴い、回遊性のタチウオの群れが紀伊水道を通って大阪湾に多数流入し、例年にない釣果につながったからなのです。
小型が中心の理由
釣果は好調ながらサイズが小さいのは、流入した群れの多くが3年目までの個体が多かったということになります。後ほど触れるように、タチウオは4年目くらいで1mに近づきます。
今後、瀬戸内海にとどまり、豊富なイワシなどのエサにより大型化する個体が増えれれば、来年の大型タチウオへの期待が高まる状況となってるのです。
つまり、来年は久しぶりに大阪湾でも大型タチウオ釣りが期待できそうなのです。
その根拠については、後ほど詳しくご説明します。
黒潮の大蛇行の終了がもたらす恩恵とは?
気象庁と海上保安庁は、今年8月に今回の黒潮大蛇行が2025年4月に終息したとの判断を発表しています。

ざっくり言うと、温かい黒潮が特に紀伊半島に近づくことで、黒潮に伴って離れていたプランクトンやベイトフィッシュが戻り、連動して多くの魚が戻ってくる可能性が高いということになりそうなのです。
この黒潮大蛇行は、2017年から2025年にかけて、約7年9カ月続いたそうです。
思い返せば、8年くらい前というのは、それ以前と瀬戸内海の海の様子が変わったと感じ始めた時期です。
以前は指4本サイズのタチウオを30匹とか釣ってましたが、その後、確かに釣果は大きく低下傾向でした。
黒潮の大蛇行の終了により、タチウオなど沿岸への暖水系回遊魚の通り道が回復しやすくなり、個体の侵入・回遊が増えることが期待できます。
そして、冬場でも比較的高水温が維持され、南方系の魚が接岸しやすくなる(シイラはいらんけど)ことが期待されます。
事実としての紀伊水道の水温変化
紀伊水道沖の海水温も、5年平均に対して近年明確な上昇傾向が示されており、地球温暖化の影響なのか、黒潮の大蛇行が寄与しているのか、詳細は定かではありませんが、そうした可能性が指摘されています。

来年の釣果とドラゴンへの期待
黒潮大蛇行がこのまま収束すれば、以前のように太刀魚の大阪湾への流入が戻り、今後の釣果に期待できる素地ができます。
一方で、流入したタチウオが大阪湾に留まり、豊富なイワシで立派に成長してドラゴンに育つ期待はどうでしょうか。それには、大阪湾での越冬比率と、外洋流出後の翌春に再流入する個体の状況が重要になります。
大阪湾での越冬比率、冬季の外洋への流出理由、”来年が期待大”な理由
文献・漁獲推移・水温変動・漁場形成パターンから判断すると、越冬して大阪湾に残るのは 20〜40%程度 と見るのが最も妥当と言われています(詳細不詳)。
冬場(12〜2月)の明石海峡では外洋向きの潮流が強いのと、水温の低下により多くのタチウオは外洋側へ押し出されるのがその主な理由と言われています。
タチウオは8℃を下限として行動が鈍ること、エサのイワシなどが減ることで外洋を目指す個体が増えるようです。
ありがたいことに近年は大阪湾〜瀬戸内の冬の水温が10〜11℃までしか下がらない年が多く、「大阪湾内に残りやすい傾向が強い」と言われています。
今年(2024〜2025)は若齢魚の流入量が多かったことで、1〜3歳魚(60〜90cmの小型)が多く、2025年の冬から来年にかけて80〜100cm級以上 に成長するボリューム群になることが期待されます。
これまでも、紀伊半島沖の外洋からの補給が増える年は、翌年〜翌々年に大型が多くなる傾向が大阪湾しばしば見られているそうです。
つまり、この冬の大阪湾の海水温の冷え込みが10℃を下回らず、エサの減少が少なければ、来年は期待できるという理屈です。
参考情報1:タチウオの成長速度
タチウオ年齢と大きさの関係は、エサや個体差のばらつきが大きく、あくまでもざっくりの目安としては以下の感じだそうです。
- 1歳:おおむね 20〜40 cm
- 2歳:25〜60 cm (幅が大きい)
- 3歳:30〜80 cm (幅が大きい)
- 4〜6歳:100 cm級に達する個体はこの年齢帯(個体によって大きく差が出る)
ちなみに平均的なタチウオの寿命は5~8年くらいのようです。
【おまけ】いくらでも食べられてお酒のつまみに最高の料理!
今年のタチウオは小型が多く、30匹近く釣っても、我が家で消費できるボリュームでした。私は、タチウオもほぼすべて3枚卸しにしてしまい、塩焼きにしても非常に食べやすく好評ですし、鍋でしゃぶしゃぶにもします。
しかし、メインは刺身や炙りですが、それではなかなか減らず、鮮度を保った状態で保管するにも限界があります。
そうした中で、いくらでも食べられるのが、3枚卸しのあと、3mm程度の細切りにして、ミョウガと大葉も同じくみじん切りにしてポン酢で和える方法です。
おかずにもなり、お酒のあてにもなり、とにかくあっさりしていていくらでも食べられるのでお勧めです。
ただし、タチウオも釣ってからの鮮度管理が重要です。適切に管理できていれば、弱真空にして酸化を予防してパーシャルで冷蔵すれば1週間くらいは刺身でも美味しくいただけます(自己責任ですが)。
秋口でも海水温は20℃近く、釣ったらすぐに海水氷のクーラーに入れることは最低限です。多くの方が船の小さなオケの中で野垂れ死に状態にしているのを見ると残念な気持ちになります。この間、魚はどんどん腐敗に向かって鮮度を落としているのです。
まとめ
今年のタチウオの状況にはかなりテンションが上がり気味です。
このまま黒潮大蛇行が収まれば、来年もさることながら、この冬も期待大かもしれません。

久しぶりのタチウオの活況を楽しんでみませんか。初心者デビューには最適です。

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