「人は血管とともに老いる」:若返りの鍵は「毛細血管の再生」にあり!ゴースト血管とは?

シニアの健康

みなさんは「人は血管とともに老いる」という言葉を耳にした事は有りませんか。

19世紀に活躍したカナダ出身の医師、ウィリアム・オスラーが提唱したこの言葉は、現代においてもその重要性が再認識されています。

実は、私たちの体の隅々まで張り巡らされた毛細血管は、年齢を重ねるごとにその数が減少し、機能が低下していくことが分かっています。

この変化は、シワやたるみ、冷え性、記憶力の低下など、私たちが日々感じている様々な不調と深く関わっているのです。

つまり、老化と呼ばれている現象と、この毛細血管の死滅は無縁ではないということなのです。

しかし、諦める必要はありません。
この記事では、毛細血管がなぜ減少するのか、それが体にどのような影響を与えるのか、そして、毛細血管の健康を維持・改善する方法について詳しく解説します。

若々しく健康な体を手に入れたい方は、ぜひご一読ください。

毛細血管の減少や機能低下がもたらす様々な体の不調

毛細血管は、組織に酸素や栄養素を供給し、老廃物を回収する重要な役割を担っており、毛細血管の機能低下は、私たちが知らない所で体に様々な症状をもたらしています。

全身的な症状

毛細血管の死滅によって、各臓器への酸素や栄養の供給が不足し、老廃物の排出が滞ります。

  • 全身倦怠感疲労感:全身のだるさや倦怠感を感じることがあります
  • 冷え性:末梢の血流が悪くなり、手足などが冷えやすくなります
  • 肌のトラブル:肌の乾燥シワたるみ色素沈着などが現れることがあります
  • 髪のトラブル:髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えたりすることがあります
  • 骨粗しょう症のリスク増加:骨の栄養供給を阻害するため骨粗しょう症の大きな要因と言われています
  • 認知症との関連:脳への酸素や栄養の供給を阻害し、認知症のリスクを増加させる可能性があります
    アルツハイマー病などの認知症の発症にも、毛細血管の障害が関与している可能性が指摘されています

特定の臓器に現れる症状

  • 脳:記憶力低下、集中力の低下、頭痛、めまいなど
    ・脳は酸素の需要が非常に高い臓器のため、敏感に影響します
  • 心臓:動悸、息切れ、胸痛など
    ・心臓も酸素の需要が非常に高い臓器のため、敏感に影響します
  • 腎臓:むくみ、頻尿、血尿など
    ・腎臓は血液を濾過する働きがあり、毛細血管が密集しています
    ・酸素不足になると、腎機能が低下し、老廃物が体内に蓄積されます
  • 眼:視力低下、視野狭窄、飛蚊症など
  • 筋肉:筋肉痛、こわばり、運動能力低下など
  • 消化器:消化不良、便秘、下痢など

こうしてみると、日常的な体の不調の多くが、毛細血管が原因で引き起こされている可能性を示唆していますね。

こうしたことは、何か別に原因があるから仕方のないことと思っていないでしょうか。

そんなことはありません毛細血管の健康を意識した改善策(後述)は有るのです。

毛細血管の死滅は本当に多くの人で、加齢などで起きるのか?

毛細血管が加齢により死滅して、体に様々な不調をもたらすことは、人体の様々な部位に関する研究で報告されています。

研究報告事例

心臓、筋肉、皮膚などの組織において、加齢に伴い毛細血管の密度や数が減少することが、複数の研究で報告されています。

例えば、Journal of Physiologyに掲載された研究では、高齢者の筋肉組織において、毛細血管の密度が20代の頃に比べて減少することや、高齢者にとっての運動の重要性などが報告されています。

また、Circulation Researchに掲載された研究では、心臓の毛細血管の減少が心機能低下の一因となる可能性が示唆されています。

これらの研究結果から、加齢に伴う毛細血管の減少は、全身の組織の酸素供給や栄養供給を低下させ、組織の機能低下や老化を加速させる可能性が指摘されているのです。

毛細血管の死滅と、「ゴースト血管」は少し異なる

ゴースト血管とは、血液が流れなくなった、または流れにくい状態の毛細血管を指すもので、毛細血管が死滅する前の段階と捉えることができるものです。

ゴースト血管の状態が長く続いたり、血管の損傷がひどくなったりすることで、毛細血管は死滅してしまいます。

ゴースト血管状態は復元可能性が高いですが、死滅した毛細血管の再生は非常に難しく、一度失われた毛細血管を取り戻すことは困難と言われています。

しかし、一方で筋トレなどで新たな筋肉ができると、それに伴い新たな毛細血管が作られることも知っておきたい事実です。

毛細血管の減少や機能低下が起きる原因とは

では、毛細血管はどうして劣化したり、死滅するのでしょうか。

大きくは下記のように整理できます。

加齢による変化

  • 細胞レベルの変化血管内皮細胞再生能力低下、テロメアの短縮など
    ・血管内皮細胞の再生能力低下:細胞分裂の回数に制限があるため、老化とともに再生能力が低下する
    ・テロメアの短縮:細胞分裂のたびにテロメアが短くなり、細胞の老化が加速する
    ※テロメア:細胞分裂を管理しており、テロメアが短くなると細胞は分裂を停止し、老化が進む
  • 組織レベルの変化血管壁の厚みの増加弾性繊維の減少など
    ・血糖値が高い状態が続くと、タンパク質と糖が結びつき、血管壁が硬化する
    ・酸化:活性酸素が血管壁を酸化させ、弾力性を低下させる
    ・炎症:低レベルの慢性炎症が、血管壁を損傷させる
  • 全身的な変化ホルモンバランスの変化免疫機能の低下など

ここでは、加齢により避けることが難しい部分と、努力で対応可能なことがあることを理解しなければなりません。

つまり、加齢というのは説明要因の一つであり、不可避なものという意味ではないのです。

生活習慣病の影響

  • 動脈硬化:高血圧、糖尿病、高脂血症などが原因となり、動脈硬化が進行し、毛細血管の血流を阻害する
  • 炎症性疾患:リウマチ、痛風などの慢性炎症は、血管壁を損傷させる

原因を知り、こうした病状を改善する努力が必要ですね。

環境要因

  • 酸化ストレス活性酸素による酸化ストレスは、血管内皮細胞を損傷させ、血管壁を硬化させる
  • 紫外線:紫外線は、皮膚の老化を促進し、毛細血管の機能低下を招く
  • 大気汚染:微粒子状物質などは、血管内皮細胞にダメージを与え、炎症を誘発する

これらの多くは、対策可能な外部要因です。

毛細血管が死滅するプロセス

  • 細胞のダメージ
    ➡ 加齢生活習慣の乱れ糖化酸化などにより、毛細血管の細胞がダメージを受ける
  • 細胞の隙間の拡大
    ➡ 細胞がダメージを受けると、細胞間の隙間が広がり、血液が漏れやすくなる
  • 血液の漏出
    ➡ 細胞間の隙間が広がると、血液が毛細血管から組織内に漏れていく
  • 酸素や栄養の供給不足
    ➡ 血液が漏れて、酸素や栄養を効率よく届けられず、二酸化炭素や老廃物が組織内に蓄積する
  • 毛細血管の死滅
    ➡ 最終的に、細胞はどんどん衰え、毛細血管がなくなってしまう

対策

加齢による毛細血管の機能低下への対策には、下記のようなものが考えられます。

  • 抗酸化作用のある食品の摂取:ビタミンC、E、ポリフェノールなど
    ➡細胞の酸化を防ぎ、老化を遅らせる効果が期待できる
  • 適度な運動:運動は、細胞の活性化を促し、老化を遅らせる効果がある
  • ストレス管理:ストレスは、細胞の老化を加速させるため、ストレスを溜めないように心がける
  • 血糖値のコントロール:糖質の過剰摂取を避け、血糖値を安定させる
  • 炎症を抑える食品の摂取:オメガ3脂肪酸、緑黄色野菜など

これらは、毛細血管の死滅のプロセスを見れば、対策の重要性が少しはイメージできるのではないでしょうか。

生活習慣病の影響、環境要因への対策は、個別に可能な範囲で改善・対策していきましょう。

毛細血管の損傷予防には加齢による要因以外の視点でも、様々な対策が必要です。

  • 免疫機能を高めるために、十分な睡眠をとること
  • 運動は、有酸素運動筋力トレーニングを組み合わせること
    ・一般的には、ウォーキング、ジョギング、水泳などが推奨されています
  • 十分な睡眠、ストレス管理バランスの取れた食事が重要です

毛細血管を再生するために有効なアプローチとは?

こうした対策の中でも、有酸素運動と筋力トレーニングバランスよい食事非常に有効な対策と考えられます。

冒頭でご紹介したJournal of Physiologyに掲載の「Skeletal muscle capillary density and microvascular function are compromised with aging and type 2 diabetes」でも、高齢者の運動の有効性が言及されています。

定期的な運動は、筋肉組織への血流を増加させ、毛細血管の数を増やす効果があると言われているのです。

又、そのためにも食事は非常に重要なファクターです。

次に、運動の有効性に関する、国内のある研究についてもご紹介します。

運動の有用性に関する研究について

名古屋市立大学の研究者たちが、運動が体にどのように良い影響を与えるかについての研究報告をしています。

これは、運動が「インターロイキン1(IL-1)」という物質と「オートファジー」という体の細胞の掃除機能にどう関係しているかに関するものです。

  • 運動がオートファジーを助ける
    定期的な運動をすることで、IL-1の働きが適切に調整されることが分かりました。これにより、体の炎症が適度に保たれ、健康を維持するのに役立つとのことです
  • 健康への影響
    運動をすることで、細胞の掃除機能であるオートファジーが活性化されることが分かりました。これにより、細胞が健康に保たれます
  • 血管の健康
    運動によって血管の内側の細胞が健康に保たれ、血液の流れが良くなります。これにより、酸素や栄養が体の隅々まで行き渡りやすくなります
  • 疲れにくくなる
    運動を続けることで、筋肉の中の毛細血管が増え、酸素の交換や老廃物の排出がスムーズになります。これにより、疲れにくくなります
  • 糖尿病予防:
    運動によって筋肉が糖を取り込みやすくなり、血糖値が安定します。これにより、糖尿病の予防にもつながります。

※インターロイキン1:
 体の中で炎症を引き起こす物質です。炎症は体を守るための反応ですが、過剰になると体に悪影響を与えることがあります。
※オートファジー:
 細胞が自分自身を掃除する仕組みです。
 古くなったり壊れたりした部分を取り除いて、新しい部分を作るのを助けます。

私が毛細血管の重要性を意識した出来事

私が毛細血管に関して興味を持ったのは、別記事「【心筋梗塞・緊急手術】で「家族が直面するコト」:急展開の連続でとてもハードだった一日、の話」でご紹介した義父の心筋梗塞の際に、先生に見せてもらった心臓のCT画像でした。

そこには、心臓の血管の先で息も絶え絶えの毛細血管の姿があり、血栓で詰まったり、消えてなくなっている姿が映っていました。

実際の人の体の中で、血栓や消滅している血管の情報に触れたのは初めてで、老化というのはこういう事なのかと衝撃を受けたものです。

まとめ

健康に活動する上で、血管を健康に保つことは非常に重要ですが、特に毛細血管の健康について意識している方は少ないかもしれません。

例えば、冷え性や疲れやすさを感じることがありますが、それは毛細血管の働きが低下しているサインかもしれません。

今回、毛細血管の重要性に気付くことで、自分の健康管理を振り返る機会を得ることが出来ました。

特に、シニア世代の方にとって、毛細血管の健康維持には運動が非常に効果的であるという研究結果が出ています。

健康でいきいきとした毎日を送るために、まずは、ウォーキングや軽い運動から始めてみませんか?

軽い運動でも、毛細血管の働きを活発にする効果が期待できます。

運動だけでなく、バランスの取れた食事や十分な睡眠も、毛細血管の健康維持に役立ちます。

みなさんも、いつまでも健康に活動するための取り組みを始めてみませんか。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました