昨年末頃、富士のすそ野を訪ねた際に、少し足を延ばして、有名な観光地の「忍野八海」尋ねました。
忍野八海は今、平日であっても世界中の人々で賑わっています。
しかし、その喧騒の中でも、この場所に身を置くと、この場所が持つ特別な力に気づかされるのです。
この記事では、忍野八海から溢れる悠久の魅力をお伝えします。
忍野八海を訪ねてみるべき理由
世に湧水は幾多ありますが、今見る忍野八海の姿は、20年ほど前に富士山の地中に深く沁み込み、季節を問わず変わらぬ冷たさと清らかさで、再び地表に湧きだしそこに流れている水そのものと、遠くに控える富士山が織り成すものなのです。

この景色が尊いのは、富士山の悠久の営みが、永い時と距離を隔てて忍野八海の静寂を生み出しているからではないでしょうか。この場所を富士の姿と共に味わい尽くすためには、そこに佇む時間は1日でも足りないと感じます。

それは、悠久の地球の営みの一部が富士の裾野に具現化した事実を、自分の中にある記憶と時の流れと重ね合わせるために必要な時間なのかもしれません。

現代社会の縮図のように、多様な人々と時間が交差するこの場所は、時に雑踏につつまれます。

この場所での喧騒を避けて、自分だけの静寂を見つけるには、工夫が必要かもしれません。

さもなければ、この場所で体験できたはずの、自分の内面の豊かな意識の起伏が、慌ただしさにかき消されてしまうかもしれません。
この場所には、写真では汲み取れない何かがあるのではないかと感じます。
忍野八海の歴史、生い立ちなど
忍野八海の概要
忍野八海は、山梨県忍野村にある8つの湧水池の総称で、その美しい景観と神秘的な雰囲気から、多くの人々を魅了しています。
水源は、大半は富士山の伏流水で、ミネラルが豊富な水質は全ての池に共通しており、1985年に環境庁から全国名水百選に選ばれています(8つの池の水の全てが対象)。
- 出口池: 忍野八海の中にあって他の池とは少し離れた場所にひっそりと佇む
- 御釜池: 忍野八海の中で最も深く、底が見えないほど深い青色をたたえる
- 底抜池: 水深は浅いものの、池の底が抜けているように見える不思議な池
- 銚子池: 銚子のような形をしていて、水面に映る景色が美しい静かな池
- 湧池: 忍野八海の中で最も湧水量が豊富で、水が湧き出る様子を間近で見ることができる
- 濁池: 他の池に比べて水が濁っていることから名付けられたが、近年は水質が改善されつつある
- 鏡池: 水面に周囲の景色を鏡のように映し出す美しい池
- 菖蒲池: 昔は菖蒲が咲いていたのどかな雰囲気の池

尚、厳密には、水源には僅かに杓子山から石割山に係る火山山麓からの伏流水も含まれるそうです。
忍野八海の歴史
今から1200年ほど前、この地には「宇津湖(うつこ)」と呼ばれる大きな湖がありました。富士山の噴火によって宇津湖は二つに分断され、そのうちの一つが忍野湖となりました。
その後、忍野湖は干上がり盆地へと姿を変えますが、富士山に降った雨水や雪解け水は、地下の溶岩層でろ過され、清冽な湧水として再び地表に現れます。これが忍野八海の水の源となっています。
富士山の地下のろ過層は、まず、約10万~1万年前の富士山(古富士山)の噴火により、厚い溶岩層が堆積し、地下に複雑な水路が形成されました。その後、約1万年前から現在にかけての、新富士火山の時代に何度も噴火を繰り返し、これらの噴火によって、溶岩流が流れ込み、地下水の流れが変化することで生まれたのです。
- 溶岩流: 新富士の噴火による溶岩流が、周辺の地形を大きく変え、地下水の流れを変えました
- 火山灰の堆積: 火山灰が厚く堆積することで、地下水の流路が変化し、湧水が出やすくなりました
- 地盤の隆起と沈降: 地震や火山活動による地盤の隆起や沈降も、地下水の流れに影響を与えました
富士山を信仰する人々は、古くから富士登山を行う際に、これらの湧水を巡礼する「八海めぐり」を行っていました。八海はそれぞれ神聖な場所として崇められ、人々の信仰を集めていました。
忍野八海は、その美しい自然景観だけでなく、長い歴史の中で培われた文化や信仰の象徴として、2013年に「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として、世界文化遺産に登録されました。
忍野八海はまた、「形状、水質、水量、保全状況、景観、仏教思想(富士信仰)など」の観点から、昭和9年(1934年)に国の天然記念物に指定されました。しかし、その一方で、観光地化による環境問題も抱えています。
まとめ
忍野八海には、いつまでも私の記憶に強い印象を残すだけのものがありました。
それは何だったのでしょうか。
私には、母なる地球の慈愛と、その危機のささやきが聞こえた気がしました。
インバウンドのパワーと融和しながら、みなさんも、是非一度、この景色に触れてみては如何でしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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