近畿の雪山と聞いて、どこまで本格的な景色を想像するでしょうか。
比良山系の主峰・武奈ヶ岳は、四季折々に登山者を惹きつける山ですが、ひとたび雪を頂くと、その表情は一変します。静寂、絶景、そして確かな厳しさをまとった、別世界の山になります。
条件が整えば、霧氷に包まれた稜線と、眼下に広がる琵琶湖の大展望。
「近畿の山」という言葉からは想像しにくい、冬山ならではの魅力に出会えます。
一方で、天候や雪質を誤れば、低山の延長線では済まされない難しさも併せ持っています。実際、当日もアイゼンを持たずに入山している登山者の姿があり、雪山のリスクが十分に共有されていない現実も感じました。
この記事では、武奈ヶ岳の雪山で実際に体験した景色やルートの様子を紹介しながら、楽しむために必要な条件選びと、最低限知っておきたい注意点もご紹介します。
「近場だからこそ、慎重に。」
武奈ヶ岳の雪山は、その判断力が試される山でした。
武奈ヶ岳の雪山が特別な理由
武奈ヶ岳は比良山系の主峰で、標高1,214.4m。日本二百名山の一つにも数えられる、関西を代表する名峰です。
冬の武奈ヶ岳は、積雪状況によってはラッセルを楽しめる本格的な雪山となり、近場でありながら中・上級者にとっても挑戦しがいのあるフィールドになります。
とりわけ印象的なのが、雪に覆われた稜線の景色です。どこまでも続く白い稜線の先に、眼下には琵琶湖、その向こうには澄み切った青空が広がります。
この光景は、「近畿で最も美しい境界線」と言っても大げさではないほどのスケールと開放感があります。
条件が整えば、放射冷却と北風によって稜線には霧氷が付き、白と青だけの静謐な世界が現れます。
訪れてみて、冬山好きがこの無垢の雪原をラッセルしながら進みたいと思う気持ちもうなずけました。
同時に、こうした景色こそが、雪山初心者が武奈ヶ岳に強く惹かれる理由でもあります。
ただし、その親しみやすさが、装備や判断を甘くしてしまう危うさも併せ持っています。
広く開けた景色、雪がもたらす静寂、凍てつく空気が生む緊張感、そして時折差し込む柔らかな陽光。
これらが重なり合うことで、武奈ヶ岳の雪山は「美しさ」と「厳しさ」が共存する、特別な場所に感じます。
この日出会えた景色
この日は、雪山としては珍しいほど穏やかなコンディションでした。
そのおかげで、武奈ヶ岳の魅力を余すことなく体感できた一日となりました。
私たちは、「葛川市民センター駐車場」に車を止め、ここから山頂までの標高差は約900mを登りました。
初心者にはそこそこ登りごたえがあります。

駐車場から葛川を渡った先のトイレで用を済ませて、歩きだすといきなりの急登が始まります。登り始めは雪もなく足場もよいのですが、中腹近くになると、数日前の雪解けにより、登山道はぬかるみに近い状態がかなり続きます。この日の登り始めの気温は2℃くらいでしたが、このぬかるみと、後半の雪道にはスパッツは必須でした。

冬道と夏道の分岐までくると、登山道の多くは雪に覆われてきます。

積雪期ルートは、登山道の多くは雪に覆われていますが、次の夏道との合流点までは、アイゼン無しでも歩ける状況でした。

御殿山からは、ワサビ峠まで50m近く下り、そこから70mほど登り返すと、一気に展望が開けほぼ360°の展望となります。

山頂直下の登りあたりからは、期待してなかった霧氷が見られて感激です。

山頂近くでは、更に美しい景色がひろがり感動の登頂でした。
言葉にするより、映像が分かりやすいので、ここでは写真だけご紹介します。






風もなく、時折日差しもあり、足元もしっかり踏み固められ、子供連れのご家族でも不安は少ないほどに、この日のコンディションは最高でした。特にこの日は、この後は完全なピーカンになっていました。
低山でも油断できない雪山の現実
武奈ヶ岳は近くて魅力的な山ですが、毎年、少なくない遭難者が出ている山でもあります。
特に冬山では低体温症など命にかかわりますので、周到な準備が必要です。
特に安全装備として、アイゼンは必須ですし、スパッツの携帯もおすすめです。
この日は天気が良かったのと、足元のコンディションはいい方でしたが、アイゼンを準備してない登山者を数組見かけました。
たまたまこの日はそれほど危険な状況ではありませんでしたが、凍結した斜面では滑落の危険がある山です。
自分の命を大切にすると共に、人に迷惑をかけない心構えが大切です。
冬山の怖さは、天候の急変による視界の悪化や、急激な気温低下やそれに伴う凍結による足元の状況悪化など、実は危険がいっぱいです。
初心者は、風が弱く晴天で、しかも雪道が踏み固められたコンディションの時以外は自重したほうがいいですし、行く場合は装備をしっかり整え、出来るだけ経験者に同行してもらいましょう。
武奈ヶ岳は、遭難も多い山です。冬山での遭難は、状況次第で命に直結します。
救助が必要となると、他人に多大な迷惑を掛けます。
天候、気温、雪道の状態、風、の状態を確認し、力量にあった行動をしましょう。
まとめ
近畿の近場で、これほどまでに魅力的な雪山は多くありません。
今回は天候とコンディションに恵まれ、近年にない感動的な山行を楽しむことができました。
しかし、山は急変します。それなりの装備は最低条件です。
安全を最優先に、周到な準備と、状況に応じた判断で行動したいものです。
その先には、条件と判断が噛み合ったときだけ、
雪の武奈ヶ岳が見せてくれる、得難い経験が待っているのかもしれません。

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