2030年、日本の認知症患者数は800万人に迫ると予測されています。そして、90歳以上の方の半数近くが認知症を発症しているという事実は、誰にとっても他人事ではなく、私たちの未来への静かな警鐘なのです。
しかし、現代科学はこうした未来が「避けられないもの」ではなく、「選び取れるもの」であることを示しています。惰性に流される日々は、気付かぬうちに私たちの脳の力を弱めてしまいますが、意欲的で能動的な暮らしは、私たちの脳の可塑性を引き出し、認知機能を守る力を持っているというのです。
この記事では、科学的根拠が推奨する9つの生活習慣を通じて、私たちの脳が健康にどう関わっているのかを分かりやすく解説します。
90歳を過ぎても、「明瞭な思考を維持して、自分の考えで判断できる人」になるために!
「認知症の未来」を遠ざけ、「健全な認知機能」を保つ生き方を、あなた自身の手で選び取るためのヒントがここにあります。
- はじめに
- 認知症にならない9つの生活習慣
- 9つの生活習慣とは
- 1.運動の習慣化:中等度〜やや高負荷が効果的
- 2.睡眠改善・節酒の管理:ホメオスタシスの維持、脳の休養
- 3.「心が躍る趣味」で楽しさを見つける: 報酬系を活性化し、意欲を高める
- 4.「積極的に社会とつながる」: 孤立を防ぎ、多様な刺激を得る
- 5.認知刺激(学習・CST):好奇心を持って能動的に思考する
- 6.「脳を育む食生活」を心がける: バランスの取れた食事
- 7.「上手にストレスと向き合う」: ネガティブ感情のコントロール術
- 8.ポジティブ心理(目的構築):自分を肯定的に捉え、楽観性やメタ認知で心の健康を育む
- 9.「新しいことに挑戦し続ける」:目新しい刺激で脳を若々しく保つ
- 認知症にならないために:見過ごされがちな、その他の重要項目
- まとめ
はじめに
私たちは長年、「認知症=アルツハイマー型」「原因はアミロイドβの蓄積」と刷り込まれてきました。しかし、現代科学はこの単一原因説の限界を明確に示し、認知症とは“脳の多様な障害”によって生じる複雑な状態であることを明らかにしてきました。
今や世界の常識では、生活習慣を通じた多様な取り組みこそが認知症予防の鍵を握るものだと考えられているのです。簡単に言うと、「今やアルツハイマー型認知症と診断することにはほぼ意味がない」というのです。
一方、日本の取り組みは国際的な視点から見ると遅れをとっているのが現状です。私たちは、世界の最新知見に正しい理解を求め、自分と家族の未来のために、よりよい選択をすべき時を迎えています。
この記事を通じて、あなたも一歩先を行く世界の理解に接し、認知症に対する意識を変え、より豊かな未来にむけた第一歩を踏み出してください。
世界的な認知症に対する理解や、日本を反面教師とした建設的な取り組みについては別記事で紹介します。
👉「日本の認知症への取り組みが、世界の非常識=反面教師となった現状」についてはこちら(工事中)。
認知症にならない9つの生活習慣
私たちは、どのように生きれば「考える力」を失わずにいられるのか。 認知症予防とは、単なる健康管理ではなく、“思考する人間”としての尊厳を守る営みです。 本記事では、脳科学と生活哲学を融合させた、認知症予防の本質に迫ります(少し大上段に聞こえるかもしれませんが、それだけの価値がある内容です。)。
認知症対策というと「病院に行く」「薬に頼る」と考えがちですが、それでは本質的な予防にはつながりません。世界の研究はむしろ、主体的な生活習慣や環境要因へのアプローチが解決への鍵であることを示しています。
この記事では、私たち自身の内面や行動、生活習慣が、いかに脳の健康に深く関わっているかを、最新の国際的研究(Lancet委員会報告、Nature Medicine、NIHなど)などに基づいてご紹介します。
9つの生活習慣とは
まずは9つの項目の一覧をご覧ください。これは、私たちが今日から意識して実践することで、現在の平均的な未来の予測を自分の力で変えるためのリストです。
1.運動の習慣化:中等度〜やや高負荷が効果的
2.睡眠改善・節酒の管理:ホメオスタシスの維持、脳の休養
3.「心が躍る趣味」で楽しさを見つける: 報酬系を活性化し、意欲を高める
4.「積極的に社会とつながる」: 孤立を防ぎ、多様な刺激を得る
5.認知刺激(学習・CST):好奇心を持って能動的に思考する
6.「脳を育む食生活」を心がける: バランスの取れた食事
7.「上手にストレスと向き合う」: ネガティブ感情のコントロール術
8.ポジティブ心理(目的構築):自分を肯定的に捉え、楽観性やメタ認知で心の健康を育む
9.「新しいことに挑戦し続ける」: 新規性による刺激で脳を若々しく保つ
それでは、それぞれの「なぜ」をご説明していきます。大切なのは内容を知ることではなく、納得して実践することなのです!
意外と若い人でも多くのことができてないのではないでしょうか。実は全ての人に密接な、生き方の問題なのです。
1.運動の習慣化:中等度〜やや高負荷が効果的
運動習慣は様々な認知症予防の中で、最も優先度や効果が高い項目になります。まずここから始めましょう。
なぜ運動がそれほどまでに効果的なのか?(科学的根拠)
- 運動は脳への血流を増やし、記憶を司る海馬の容積を増加させることが科学的に証明されています
- また、「脳の肥料」と呼ばれるBDNF(脳由来神経栄養因子)の産生を促し、神経細胞の新生やシナプス形成を促進します
- 運動の習慣化は認知症予防の最も重要な柱の一つで、有効性が強く認められているものです
・ランダム化試験やメタ解析で記憶・実行機能の改善や海馬サイズ増加が示されています
今日からできる実践方法
既往(心疾患・腎疾患・フレイル等)を考慮して、個別に運動内容や負荷を調整します。
- 中等度からやや高負荷の有酸素運動や筋力トレーニングを習慣化しましょう
- 心肺機能を高める「コグニサイズ」(運動+認知課題)も有効です
- 目安:週150分の中等度有酸素運動(早歩きや階段の昇降など)と、週2回の筋力トレーニング
・毎日30分のウォーキング、スクワットや腕立て伏せを週に数回行うなど

2.睡眠改善・節酒の管理:ホメオスタシスの維持、脳の休養
私たちは睡眠の質に無頓着になりがちですが、認知症予防においては睡眠も重要な管理項目なのです。
また、睡眠の質を保つ上で、飲酒は良い影響をもたらしません。少なくても適度な飲酒の意識が重要です。
なぜ睡眠改善・節酒が重要なのか?(科学的根拠)
- 睡眠不足は、脳の老廃物除去プロセス(グリンパティック系)を阻害し、アミロイドβなどの蓄積を促すことで、認知症リスクを高めると報告されています
- 睡眠は単なる休息ではなく、脳をクリーンアップする能動的なメンテナンス時間なのです
- 飲酒は入眠を促しますが、睡眠の後半部分が浅くなり中途覚醒が増加し、睡眠の分断による全体的な睡眠の質が著しく低下します
- 飲酒は、特にレム睡眠の時間を大幅に減らすことで、記憶の整理や感情の安定に影響し、翌日の精神的なパフォーマンスや集中力に悪影響を及ぼすことが分かっています
今日からできる実践方法
- 目安: 7〜8時間を目安に、決まった時間に就寝・起床しましょう
・規則正しい睡眠習慣は、睡眠の質の確保のために重要です - 寝室の明るさや温度環境を整え、就寝前のデジタルデバイスの使用を適切に管理しましょう
- 具体例:寝室を暗く涼しく保ち、寝る前のアルコールやカフェイン摂取を避けます
・飲酒は睡眠時無呼吸症候群の原因でもあり、睡眠の質を下げることが指摘されています - 飲酒は脳の萎縮や認知機能低下に繋がるため、その意味でも節制することが推奨されます
3.「心が躍る趣味」で楽しさを見つける: 報酬系を活性化し、意欲を高める
なぜ「趣味」が重要なのか?(科学的根拠)
- 楽しい/意味があるといった内発的な活動は脳の報酬系(ドーパミン作動性神経系)を活性化させ、意欲や幸福感を高め、学習・記憶を支えます
- 脳の報酬系の活性化は、意欲や幸福感を高めるだけでなく、脳全体の健康にも寄与します
- 人生の目的意識が高い人は、認知症リスクが30%低いという研究結果も出ています
- また、趣味は特定の脳領域を繰り返し使うことで、その機能を維持・強化し、認知予備能を高めます
※認知予備能:脳の病理的な変化があっても、その機能を維持できる能力のこと - 楽しみは脳の栄養であり、趣味を持つことは認知症予防そのものという見方もあります
今日からできる実践方法
- 本人が心から楽しめる活動を選ぶことが重要
- 具体例: 音楽、絵画、園芸、手芸、料理、学習、創作など、単なる作業ではなく、意味づけが重要であり、「楽しい」と感じることが大切です
- 無理に趣味として活動することは本末転倒であり、「楽しい」が出発点です

4.「積極的に社会とつながる」: 孤立を防ぎ、多様な刺激を得る
社会的孤立は脳を委縮させ、認知症の主要リスク因子です。社会的なつながりを維持する意識と努力が重要です。
なぜ社会とのつながりが必要なのか?(科学的根拠)
- 孤立を避け、社会的なネットワークや支持を受ける人は、孤独な高齢者に比べて認知症リスクが低いことが、多くの疫学研究で示されています
・他者との交流を通じて得られる存在価値の認識は、心理的な満足度を高め、ストレスを軽減する効果も期待されます
・社会的交流が多い人は認知症リスクが30〜40%低下するという研究がある一方で、孤立はうつ・ストレスを通してリスクを上げると言われています - 社会的な交流は、会話、共感、計画など、複数の認知機能を同時に使うため、脳全体を活性化させます
・会話や協働は複数の認知機能を同時に刺激し、前頭葉と感情制御を活性化します
今日からできる実践方法
- 地域活動やボランティア、友人との交流など、他者との積極的なつながりを持ち続けましょう
- 目安:週に1〜2回の社会的な接点を持ちましょう(地域活動、ボランティア、クラブ)
- 具体例:地域コミュニティへの参加、趣味のサークル、友人とのランチなど
5.認知刺激(学習・CST):好奇心を持って能動的に思考する
なぜ認知刺激が重要なのか?(科学的根拠)
- 脳は、神経回路を再構築する柔軟性(可塑性)を持っており、生涯にわたる知的活動や新しい経験や学習はシナプス可塑性を強化し認知予備能を高めます
※認知予備能:脳の病理的な変化があっても、その機能を維持できる能力のこと - 脳は使うほど強くなるので、学び続ける姿勢こそが予防力です
・教育歴(学びの期間の長さ)は脳の予備力を高め認知症発症を遅らせる複数の研究成果があます
・高齢期でも新しい知識や技能を学ぶことで、脳の可塑性を維持することができます
・問題解決や創造的活動が脳のネットワークを強化します - 認知刺激療法(CST)や多領域認知トレーニングはグローバル認知を改善すると言われています
今日からできる実践方法
- 新しい知識やスキルを学ぶなど、好奇心を持って能動的に思考する習慣を身につけましょう
- 目安:日々、少しだけ脳に負荷をかける活動を取り入れましょう
- 具体例:新しい言語の学習、楽器の演奏、複雑なパズル、旅行の計画、読書など
・家族での共同活動や講座参加も効果的 - 脳に負荷をかけるような新しい学習や知的活動に挑戦し続けることが重要です
・意図せず情報を受け取るのではなく、目的意識をもって情報に対峙します
・受動的にテレビを見るのではなく、視聴していることの意義を考え、内容を吟味します
6.「脳を育む食生活」を心がける: バランスの取れた食事
食生活に関しては、既往歴(心疾患・腎疾患・フレイル等)を考慮し、必要に応じて専門家(医師や管理栄養士)に相談することが大切です。
推奨される食習慣:今日からできる実践方法
食材・習慣 | 効果 |
---|---|
地中海式・MIND食 (野菜・魚・全粒穀物・オリーブオイル) | 抗酸化物質・不飽和脂肪酸が豊富 抗酸化・抗炎症・血管保護作用で認知症リスク低下 |
発酵食品 (ヨーグルト、納豆、キムチなど) | 腸内フローラ改善 → 短鎖脂肪酸が脳に好影響 |
食物繊維が豊富な野菜・果物 | 血糖安定・腸内環境改善・炎症抑制 |
全粒穀物・豆類・魚介類 | ビタミン・ミネラル・オメガ3脂肪酸が神経機能を支える |
マグネシウム・カルシウムの適量摂取 | 神経伝達・筋収縮・血管調整に不可欠(過不足に注意) |
避けるべき食習慣
食材・習慣 | リスク |
---|---|
白糖・添加糖・砂糖入り飲料(SSB) | 血糖急上昇 → インスリン抵抗性 → 認知症リスク上昇(Liu 2022) |
精製小麦・超加工食品(白パン・菓子類など) | 炎症・代謝異常・血管障害を引き起こす可能性(JAMA等) |
過剰なMg摂取(Ca:Mg比の不均衡) | 認知症リスク上昇との関連報告あり(Luo 2022) |
栄養の偏り・サプリの乱用 | 既往症(腎疾患・心疾患)によっては逆効果になることも |

認知症予防にどのような食事がなぜ有効か?(科学的根拠)
認知症予防における食事の役割は、単一の栄養素ではなく、複数のメカニズムを通じて脳の健康を支えることにあります。
- 腸脳相関の活性化:
・腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸や神経伝達物質が脳機能に影響を与えます
・腸内環境の改善は、炎症抑制・気分安定・認知機能維持に寄与します - インスリン抵抗性の予防:
・脳はインスリン感受性が高く、抵抗性が進むと認知機能が低下(3型糖尿病説)します
・砂糖や精製された炭水化物を控えた血糖変動を抑える食事により血糖値の急上昇を防ぎ、脳のインスリン抵抗性や慢性炎症を抑制します - 抗炎症・抗酸化栄養の摂取:
・抗酸化物質・不飽和脂肪酸・微量栄養素が神経細胞の保護し、炎症を抑えることで神経伝達の安定性を維持します
・地中海式・MIND食(野菜・魚・オリーブオイル中心)は、FINGER試験などで認知機能維持に効果が示されています - ミネラルバランスの調整:
・マグネシウム・カルシウムは神経伝達に不可欠ですが、食事を通じた摂取が重要です
・Ca:Mg比のバランスが重要で、過剰摂取は逆効果となる可能性があります
7.「上手にストレスと向き合う」: ネガティブ感情のコントロール術
一言でストレスと言っても、上手に管理できている人は多くないのではないでしょうか。
ただし、その問題点を知り、どうあるべきかを知っておくことはとても有益です。
なぜストレス管理が重要なのか?(科学的根拠)
- 精神的な回復力(レジリエンス)を高めることは、脳の健康を維持するために不可欠です
- 過度な慢性的なストレスは、ストレスホルモンであるコルチゾールを過剰に分泌させ、記憶を司る海馬の神経細胞を萎縮させるため、感情調整が重要なのです
- ストレス対応能力が高いく心理的レジリエンスが高い人(首尾一貫感覚が高い人)は、認知症リスクが低いという研究結果も出ています
今日からできる実践方法
- 瞑想、呼吸法、趣味、運動などを通じて、ストレスを上手に管理する術を身につけましょう
- 具体例:マインドフルネス瞑想、好きな音楽を聴く、自然の中で散歩する、運動、社会支援でストレスを低減する介入などが有効
- 目安:毎日数分でも、自分をリラックスさせる時間を作るなど

8.ポジティブ心理(目的構築):自分を肯定的に捉え、楽観性やメタ認知で心の健康を育む
なぜポジティブ心理が重要なのか?(科学的根拠)
- 人生の目的感や楽観性や自己肯定感や前向きな思考は、抑うつを防ぐことで精神的な健康を保ち、認知機能を間接的に支え、認知症のリスクを下げると報告されています
- 自己効力感は、ストレス耐性と脳機能を支える力があります
- これらは、結果として精神的な健康、脳の健康に良い影響を与えます
- 生きがいは最高の防御であり、ポジティブな自己理解が脳を支えます
- メタ認知と現実的な意味付けが脳の健康に寄与することが知られています
今日からできる実践方法
- 小さな達成感や役割を見つけ、「自分にはできる」という自己効力感・自己肯定感を高める習慣を身につけましょう
- 無理に否定的な思考を排除するのではなく、受け入れて管理することが大切です
・過度な否定感情の抑圧はストレスとなり逆効果といわれています
・重要なのは現実に根差したポジティブな意味付けであり、否定感情を認め、客観的に観察し、適切に管理する姿勢を育むことです
・感情を客観的に観察し、過剰な反応を避けるようなアプローチが科学的にも有効なのです - 目安:日常の中で自分の役割や価値を見出しましょう!
- 具体例:ボランティアで人の役に立つ、家族や友人のために何かをする、小さな目標を立てて達成するなど、何でも構いません
9.「新しいことに挑戦し続ける」:目新しい刺激で脳を若々しく保つ
なぜ新たな経験や学習が重要なのか?(科学的根拠)
- 新しい経験や学習は、神経回路を再構築し新規シナプス形成、強化により可塑性を高め、脳の柔軟性を高めるなど認知機能を刺激します
- 生涯学習や新しいスキル習得は、認知予備能を高め、脳の機能が失われるのを防ぐのに役立ち、脳の可塑性(柔軟性)を強化します
- 日常に新奇性(斬新でユニーク)を加える新しい挑戦(旅行・新しい趣味・学習など)は、脳全体を活性化させ、柔軟性を保ち、認知機能の低下を防ぐのに役立ち、脳の若返りを促します
今日からできる実践方法
- 日常の惰性に甘んじることなく、新しいことに挑戦し、思考プロセスに新たな刺激を与えましょう
- 目安:少し負荷がかかるような、これまでやったことのないことに挑戦しましょう
- 具体例:言語学習、楽器演奏、ダンス、旅行の計画など、新奇性のある活動に挑戦します
認知症にならないために:見過ごされがちな、その他の重要項目
上記の取り組み以外にも、認知症予防には様々な取り組みがあり、例えば、「難聴は認知症最大の修正可能因子」とすら言われており軽視できません。
項目 | 目的・効果 |
---|---|
聴力補正 | 難聴は認知症最大の修正可能因子 補聴器で進行が約50%遅延 |
歯周ケア | 慢性炎症が神経炎症を誘発 定期歯科検診が予防に有効 |
大気汚染対策 | PM2.5が中枢炎症を引き起こす 空気質改善が有効 |
睡眠時無呼吸治療(OSA) | OSAは低酸素と睡眠破綻を介して認知機能に悪影響 CPAPで改善 |
抗コリン薬の減薬 | 長期使用で認知機能低下 定期的な薬剤レビューが必要 |
予防接種 | 感染によるせん妄・認知悪化を防ぐ インフルエンザ等の接種推奨 |
フレイル予防 | 筋力・栄養・バランス訓練で認知アウトカムを改善 |
視力補正 | 社会参加・転倒予防・認知負荷軽減に寄与 |
ポリファーマシー対策 | 多剤併用は認知悪化の要因 薬剤適正化が重要 |
又、中年期の高血圧や糖尿病は、認知症のリスクを1.5〜2倍に高めることも科学的に支持されています。疾病に該当する場合は、こうした側面からの生活習慣の見直しも求められます。
まとめ
認知症の未来を決めるのは、医療システムではなく、私たち自身の選択です。
今から始める小さな一歩が、10年後、20年後の「健やかな自分」を作ります
そして日本の社会・文化的背景が、認知症の増加に影響している可能性についても目を向けてみる必要がありそうです。
この記事を起点に、あなた自身の生活を見直し、未来を守る一歩を踏み出してみませんか。
認知症にまつわるその他の関連記事のご紹介
尚、「加齢に伴う認知機能の衰え」と、「認知症」は明確に別のものです。この点は別記事で改めて分かり易くご紹介します。
👉「加齢に伴う認知機能の衰えと、認知症」の違いについてはこちら(工事中)をご参照ください。
参考(主要文献・レビュー)
- Erickson KI, et al., Aerobic exercise increases hippocampal volume (PNAS 2011). PubMed
- Szuhany KL, et al., Exercise and BDNF meta-analysis (2014). PMC
- Sutin AR, et al., Purpose in life and risk of dementia (2021/2022 meta/analysis). PMC+1
- Penninkilampi R, et al., Social engagement and dementia risk meta-analysis (2018). PubMed
- Kim K, et al., Cognitive stimulation meta-analysis (2017). PMC
- Xie L, et al., Sleep drives metabolite clearance (glymphatic) (Science 2013). PubMed
- Liu H, et al., SSB intake and cognitive disorders meta-analysis (2022). PubMed
- Luo J, et al., Calcium and magnesium intake and dementia risk (2022). PMC
- Ngandu T, et al., FINGER trial — multidomain lifestyle intervention (Lancet 2015 and subsequent work). サイエンスダイレクト
1. 運動と脳の構造・機能
- Erickson et al., 2011 (PNAS):有酸素運動は、記憶を司る脳の部位である海馬の容積を増加させることを示しました。これは、運動が脳の構造を物理的に改善し、認知機能を向上させることを示唆しています。
- Szuhany et al., 2014 (PMC):運動と脳由来神経栄養因子(BDNF)の関係に関するメタアナリシスです。BDNFは、神経細胞の成長や生存を助けるタンパク質で、「脳の肥料」とも呼ばれます。この研究は、運動がBDNFのレベルを高めることを明らかにしました。
2. 社会的・心理的要因
- Sutin et al., 2021/2022 (PMC):人生の目的意識が高い人は、認知症になるリスクが低いことを示唆しています。生きがいや目標を持つことが、精神的な健康だけでなく、認知機能の維持にも重要であることが示されました。
- Penninkilampi et al., 2018 (PubMed):社会的交流が活発な人は、認知症になるリスクが低いというメタアナリシスです。孤立を避け、社会的なつながりを持つことが、認知機能の低下を防ぐ上で重要な要素だと結論づけています。
3. 認知刺激と睡眠
- Kim et al., 2017 (PMC):認知的な刺激(新しい学習や知的活動)が認知機能の改善に役立つというメタアナリシスです。脳を積極的に使う活動が、認知予備能を高めることにつながります。
- Xie et al., 2013 (Science):マウスを使った研究ですが、睡眠中に脳内の老廃物を除去する「グリソーム系」(グリンパティック系)と呼ばれるシステムが非常に活発になることを発見しました。これは、睡眠がアミロイドβなどの認知症関連物質を脳からクリアする上で不可欠であることを示唆しています。
4. 食事と生活習慣
- Liu et al., 2022 (PubMed):加糖飲料(SSB)の摂取量が多いと、認知症や認知障害のリスクが高まるというメタアナリシスです。高糖質の食事が認知機能に悪影響を与える可能性を示しています。
- Luo et al., 2022 (PMC):カルシウムやマグネシウムの摂取が、認知症のリスク低減と関連している可能性を示唆しています。これらのミネラルが神経機能の維持に重要であることを示しています。
5. 複合的介入
- Ngandu et al., 2015 (Lancet):FINGER試験は、食事指導、運動、認知刺激、社会活動を組み合わせた多領域にわたるライフスタイル介入が、高齢者の認知機能低下を遅らせることを示した世界初のランダム化比較試験です。単一の介入ではなく、複数の生活習慣を同時に改善することが最も効果的であることを実証しました。
その他の主要なソース:
- WHO Guideline — Risk reduction of cognitive decline and dementia (2019). (世界保健機関)
- ACHIEVE / 聴覚介入ランダム化試験(2024)。(ランセット, PMC)
- Periodontal disease — 系統的レビュー(Asher 2022、Dibello 2024)。(PMC, PubMed)
- PM2.5 と認知症:最近の系統的レビュー/Burden-of-Proof メタ解析(2024–2025)。(Nature, ランセット)
- OSA と CPAP の認知効果に関するレビュー・RCT(2024–2025)。(PMC, サイエンスダイレクト)
- 抗コリン薬・deprescribing の系統的レビュー(2022–2025)。(PMC, Nature)
- ワクチン(インフル)と認知リスク関連研究(コホートメタ解析)。(PubMed)
- ポリファーマシーと減薬効果(JAMA 系等)。(JAMA Network, サイエンスダイレクト)
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