みなさんは、膝に不安はありませんか?
年齢を重ねるごとに、膝に不安を抱え得ている人が増えてきますね。
この先、膝を健康な状態で過ごすために「すべきこと」と、「やってはいけないこと」、「やっても無駄なこと」を正しく理解していますか。
様々な情報が耳に入りますが、正しい知識で正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
このブログでは、膝関節の仕組みを理解して、正しい膝機能の維持のためにシニアが取り組むべきこと、無駄な努力、やったらダメなことなどをご説明します。
膝の構造を知ろう!
膝関節は皆さんが日常的に行っている通り、主に屈曲(曲げる)と伸展(伸ばす)の動きを行います。
これらの動きは、大腿四頭筋やハムストリングスなどの筋肉の収縮と、靭帯の働きによって制御されています。
軟骨と半月板の役割とその大切さ
膝関節は、私たちの体を支え、歩く、走る、ジャンプするといった様々な動きを可能にする重要な関節です。
この関節の働きをスムーズにするために、軟骨と半月板が重要な役割を果たしています。
軟骨の役割
軟骨は、骨と骨が直接ぶつかるのを防ぎ、関節を滑らかに動かすためのクッションのような役割を果たしています。
この軟骨は硝子軟骨(しょうしなんこつ)とよばれる軟骨で、非常に柔軟性が高く、滑らかに動くことができます。
- 摩擦の軽減:軟骨は、非常に滑らかな表面を持っており、骨と骨が直接こすれ合うのを防ぎます
- 衝撃吸収:体重がかかったり、ジャンプしたりした際の衝撃を吸収し、関節を保護します
- 関節の安定性:関節の形状を維持し、関節の安定性を保ちます
半月板の役割
半月板は、膝関節の内側と外側にそれぞれ存在するC字型の軟骨組織です。
これは、線維軟骨(せんいなんこつ)とよばれる軟骨で、関節軟骨と比べるとやや硬く、関節をしっかりと支え、衝撃を和らげるという作用を持ちます。
- 衝撃吸収:軟骨と同様に、衝撃を吸収し、関節への負担を軽減します
- 荷重分散:体重を関節全体に分散させ、特定の部位への負担を軽減します
- 関節の安定性:関節の動きを安定させ、関節がズレるのを防ぎます
- 潤滑作用: 関節液を保持し、関節の動きを滑らかにします
軟骨が再生するメカニズムと、ほぼ再生できない半月板
軟骨と半月板は、弾力性がありとても丈夫な組織ですが、一度傷ついたり、摩耗してすり減ると、なかなか元に戻りにくいという特徴があります。
軟骨について
実は、軟骨には神経も血管もほとんど通っていないため、他の組織のように簡単に再生することができないのです。
軟骨細胞は、日常的な摩耗に対する修復は行いますが、大規模な損傷に対する再生能力は限られており、新しい軟骨組織を形成するプロセスは非常にゆっくりとしたものなのです。
年齢や栄養状態、運動不足など、様々な要因によって再生速度は異なりますが、一般的に10年程度の長いサイクルがかかると言われています。
軟骨は、圧力に対しては強い組織ですが、一度損傷すると再生に時間がかかるため、大切に扱う必要がある組織だということが分かりますね。
尚、軟骨の栄養は、関節包の内側の滑膜から分泌される関節液によって供給されています。
関節液は、関節の動きによって軟骨内に浸透し、軟骨細胞に栄養を供給する役割を果たしているのです。
関節の動きに伴い関節液が軟骨内に浸透しやすくなり、軟骨の健康維持に繋がります。
これは関節の健康を維持する上で、知っておきたいことです。
半月板について
半月板は関節包付着部周辺に10-25%程度の血管がありますが、その他の部分には血管はなく、一度傷つくと再生はほぼ不可能と言われており、外科的な処置が必要になります。
半月板が損傷した場合、出血後に血栓が形成されやすく、新しい血管の再生を妨げる上に、繊維軟骨は他の組織の細胞に比べて分裂・増殖能力が非常に低いことも関連しているそうです。
半月板の損傷は、スポーツ障害や加齢など様々な原因で起こり、縦断裂、水平断裂など、損傷の種類も様々です。
治療法としては、保存療法、手術療法、再生医療などがありますが、損傷の程度や個人別の状態に合わせて適切な治療法を選択することが重要と言われています。
膝関節と上手に付き合う方法 (いつまでも自分の足で歩くために)
軟骨は、損傷したり摩耗して擦り切れてしまうと再生が難しく、半月板はほぼ再生が不可能なゆえに、気をつけるべきことや上手な付き合い方があるのです。
関節には過度な負荷をかけないことが重要
体重は大敵
歩行時の関節への負荷は、体重、歩幅、歩行速度など、様々な要因によって異なり個人差もありますが、一般的に、体重の5倍程度の負荷がかかると言われています。
走ったり、飛んだりするとその衝撃は更に大きくなります。
膝の軟骨にとって、体重は大敵なのです。
標準体重(身長m✖身長m✖22)を目安に、特に急な体重増加には気をつけましょう。
関節への負担を軽減する歩き方・走り方がある
歩く姿勢も大事で、頭を前に突き出して骨盤が後ろに傾くような姿勢では、偏った荷重が膝関節にかかるリスクがあります。
「頭が前に下がり、骨盤が後ろに傾斜する姿勢」は、膝関節の外旋を促し、関節の内側に過度な荷重をかける可能性があると言われています。
こうした姿勢を続けるとO脚につながるとも言われているのです。
走る姿勢でも同様のことは言えますし、ランニングフォームはより重要で膝の健康に大きく影響します。
正しいフォームを身につけることで、膝の痛みを予防し、快適な歩行やランニングを行いましょう。
背筋を伸ばした姿勢を意識することも大切です。
正座やアグラや斜め座りは良くないの?
正座やあぐらなど、膝を曲げる角度が大きい姿勢は、膝の裏の関節に大きな負担をかけ、軟骨や半月板を傷つける可能性があります。
また、長時間同じ姿勢でいることも、膝の血行を悪くし、痛みを引き起こす原因となります。
膝の専門医の多くは、こうした姿勢が膝の健康に悪影響を与えることを指摘しています。
何故なら、膝関節の機能に対して、正座やあぐらの姿勢は無理な力がかかるだけで、百害あって一利なしだからです。(個人差であまり大きな影響を受けてない人も、確かにいるかもしれません)
日本の文化では、正座やあぐらが一般的ですが、膝の健康を長く保つためには、これらの姿勢をできるだけ避けることが大切です。
出来る限り椅子に座ることを心がけ、どうしても床に座る必要がある場合は、いわゆる体育座りが推奨されています。
膝の痛みを感じている方や、将来にわたって健康な膝を保ちたい方は、ぜひこれらの情報を参考に、日常生活を見直すことを強くオススメします。
十分な鍛錬が出来てない状態で、過度な衝撃や過大な負荷をかけないことが重要
膝関節を健康に保つためには、無理のない範囲での運動が大切です。
特に、筋力が十分に付いていない状態で、急に大きな力をかけたり、無理な姿勢で運動したりすることは避けましょう。
適切な筋力をつけて大きな負荷をかけるのと、準備運動なしにいきなり激しい運動をするのでは、膝への負担が全く異なります。
ウォーキングや水泳など、関節への負担が少ない運動から始め、徐々に強度を上げていくことがおすすめです。
もし、運動中に痛みを感じたら、無理せず運動を中止し、専門家に相談しましょう。
運動前後のストレッチやウォーミングアップ、クールダウンも、怪我を防ぐために大切です。
関節を支えている筋肉の強化はとても重要
膝関節は、単に関節だけの動きというのではなく、周囲の筋肉や靭帯と一体となって機能しています。
筋機能の低下は、膝関節への負荷を増大させ、軟骨や半月板の損傷や変形性膝関節症などのリスクを高める要因となります。
特に、太ももの筋肉を鍛えることが大切です。
大腿四頭筋は膝蓋骨を安定させる役割があり、ハムストリングスは膝の屈伸をスムーズに行うために重要です。
また、体幹部の筋肉は姿勢を安定させ、膝への負担を軽減する役割を果たします。
昔は膝関節に対しては大腿四頭筋が重要という時代もあったようですが、現在はハムストリングスや体幹を含めたバランスが重要という認識に変遷してきています。
膝を支えている筋肉の強化は、膝関節の軟骨や半月板への負担が軽減され、損傷リスクが緩和されますので、実は非常に重要なことなのです。
せっかく鍛えた筋肉も、運動不足が続くと、筋力が低下し、十分に機能しなくなってしまうかもしれません。
継続的な習慣として生活の一部になるよう頑張りましょう。
膝周辺の筋肉を鍛えることが大切な理由
- 関節への負担軽減:膝の筋肉が強くなると、関節にかかる負担を分散させることができ、軟骨や半月板へのストレスを軽減する
- 安定性の向上:筋肉が強化されると、膝関節の安定性が向上し、関節がスムーズに動くようになる
- 痛みの軽減:筋肉が弱いと、関節が不安定になり、痛みを感じやすくなる
筋肉を鍛えることで、痛みを軽減する効果も期待できる
推奨される筋トレの方法
筋トレは、自分の体力や目的に合った適切な指導を受け、徐々に負荷を上げていくことが大切です。
- 低負荷の運動:ウォーキング、水泳、自転車こぎなどがおすすめ
これらの運動は、関節への負担が少なく、継続しやすいという特徴がある - 筋力トレーニング:大腿四頭筋、ハムストリングス、お尻の筋肉などを中心に、軽い負荷で繰り返し行う
- ストレッチ:筋肉を伸ばすストレッチは、関節の柔軟性を高め、血行を促進する
無理なトレーニングは、怪我につながるだけでなく、モチベーションの低下にもつながりかねません。
専門家の指導の元、自分のペースで安全にトレーニングを行いましょう。
また、バランスの取れた食事や十分な休息も、効果的な筋トレには欠かせません。
栄養のバランスも大事
膝関節の健康維持には、適切な運動と並んで、バランスの取れた食事が重要です。食事を通して、関節の潤滑油となる成分を摂取したり、炎症を抑えたりすることで、膝の健康をサポートすることができます。
カルシウム、ビタミンD、タンパク質などをバランス良く摂取することが重要です。
- カルシウム: 骨の主成分であるカルシウムは、関節の強度を保つために必要
牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、緑黄色野菜などがカルシウム源としておすすめ - ビタミンD:カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、日光浴や鮭、マグロなどの魚介類から摂取
- コラーゲン:関節軟骨の主要な構成成分です。鶏皮、豚足、魚介類などに多く含まれている
- オメガ3脂肪酸:炎症を抑える効果があり、関節の痛みを軽減する可能性がある
サバ、イワシ、マグロなどの青魚や、亜麻仁油、えごま油などがおすすめ
ヒアルロン酸やコラーゲンのサプリは意味があるの?
ヒアルロン酸やコラーゲンのサプリメントが効果があるかどうかは、一概にYesともNoとも言えないようです。
これらの成分は、分子が大きいため、そのままでは腸から吸収されにくく、多くはアミノ酸に分解されてしまいます。
しかし、一部は腸内細菌によって分解されたり、低分子化されたりすることで、体内に吸収される可能性があります。
また、コラーゲンペプチドのように、特定の構造を持つコラーゲンは、腸管から吸収され、体内のコラーゲン合成を促進する可能性が示唆されています。
これまでの研究では、ヒアルロン酸やコラーゲンを摂取することで、肌の潤いを保ったり、関節の動きをスムーズにするなどの効果が報告されています。
ただし、これらの効果は個人差が大きく、腸内環境や代謝の状態、年齢などによって異なるようです。
つまり、私たちは食事のバランスに気をつけることが最も重要ということだと思います。
ヒアルロン酸注射は医療的な意味がある:その理由とは
サプリは体内吸収後に再合成されて、その一部が膝への作用として機能する可能性を期待するもので、効果はかなり限定的と考えられます。
一方、患部への直接注射は、患部に直接作用することで、その効果はサプリと違い大きいといわれています。
ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、膝関節内の潤滑油の役割を果たす成分を補給することで、関節の動きをスムーズにし、痛みを直接的に軽減することを目的として行われます。
特に変形性膝関節症などの膝の痛みを緩和するために、広く行われている治療法です。
尚、コラーゲン注射も、変形性膝関節症などの膝の痛みを緩和の目的で行われるようですが、軟骨成分を注射する事で、軟骨の再生を促すものですが、効果の有効性に関する検証課題もあるようで、有効な治療法として医学界全体でのコンセンサスが得られているレベルではないという指摘もあります。
膝が故障したら、原因を知り、必要に応じてしっかり休むことが大事
膝を損傷した場合、しっかり休むことが大事です。
損傷の程度によっては、安静にするだけで回復する場合もありますが、ひどい場合は、物理療法や手術など、適切な治療が必要な場合もあります。
膝関節に痛みや不具合を感じた場合は、自分の判断で治療法を決めるのではなく、まずは専門医を受診しましょう。
専門医の診断に基づき、安静にする、運動療法を行うなど、適切な処置を受けることで、より早く回復することができます。
膝が痛くなる原因
膝の痛みは「半月板の損傷」が起点となることが多い
膝が痛くなる原因は様々ですが、多くは膝関節への過度な負荷が原因です。
例えば、長時間同じ姿勢でいることや、足を組んで座る、重い物を持ち上げる動作などを繰り返すことで、膝の軟骨や半月板が傷つき、痛みへとつながることがあります。
そして、膝の損傷の多くは、半月板の故障が先行した結果として、軟骨への過負荷により軟骨がすり減ることが多いようです。
軟骨や半月板は、実はとても丈夫で、適切な負荷であれば簡単には傷つきません。
しかし、無理な負担をかけ続けると、これらの組織は徐々にすり減ったり、ひびが入ったりするのです。
膝の健康を保つためには、これらの組織への負担が過大とならないように、適正な範囲内に抑えることが大切です。
その他の膝関節の痛みの原因
全ての膝の痛みが、半月板の損傷が原因で起こるわけではありません。
他の要因として、以下のようなものなどが挙げられます。
- 靭帯損傷:膝を支える靭帯が損傷すると、関節が不安定になり、痛みや腫れを引き起こすことがあります
- 軟骨の変性:加齢や過度の運動によって、関節軟骨が自然にすり減ることもあります
- 滑膜炎:関節の内側を覆っている滑膜に炎症が起こり、痛みや腫れを引き起こすことがあります
- 骨の異常:骨の変形や骨折などが原因で、膝の痛みが発生することもあります
代表的な膝の病気
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、加齢、肥満、関節の構造的な異常(O脚、X脚など)、繰り返しの運動による関節への過度な負荷、遺伝的要因、ホルモンバランスの変化などが、単独または複合的に作用し、発症する病気です。
これらの要因によって、関節軟骨が徐々にすり減り、弾力性を失うことで、骨と骨が直接こすれ合い、痛み、腫れ、関節の動きが制限され、こわばり感、関節音がするなどの症状が現れます。
進行すると、O脚やX脚などの変形を伴うこともあります。
遺伝的な素因や、リウマチなどの基礎疾患を持つ人は、変形性膝関節症を発症しやすいことが知られています。
変形性膝関節症の予防と治療
- 体重管理:肥満は変形性膝関節症のリスクを高めるため、適切な体重を維持することが重要
- 運動:適度な運動は、関節の柔軟性を維持し、筋肉を強化することで関節への負担を軽減できる
- 関節への負担を減らす:高いヒールを避ける、長時間立つことを避けるなど、関節への負担を減らす工夫をする
- 早期の治療:症状が出始めたら、早めに整形外科を受診し、適切な治療を受けることが大切
やってはダメなこと
痛み止め薬について
痛み止めは痛みを和らげますが、軟骨の損傷を治す薬ではありません。
痛みを感じないからといって、無理な運動をしたり、関節に過度な負担をかけたりすることは避けるべきです。
痛み止めは、医師の指導のもと、最低限の日常生活を送るための手段として上手に利用したいものです。
スクワットについて
変形性膝関節症など、軟骨が損傷している場合は、スクワットなどの体重負荷のかかる運動は、症状を悪化させる可能性があるため、避けるべきです。
適切なフォームで適切な負荷であれば問題ないという意見もありますが、一般的には、軟骨を損傷している場合は、体幹を安定させ、関節への負担を軽減するような運動が推奨されています。
おまけ :膝関節に加えて「骨」も大事
膝だけでなく骨の強度の維持・向上も課題
骨密度の低下は、骨粗鬆症などのリスクを高めるため、骨密度を維持することも重要です。
適度な衝撃刺激は、骨細胞に「骨を強くする」という信号を送ります。
この信号を受け取った骨細胞は、新しい骨組織を作り出し、古い骨組織を吸収することで、骨の再生を促します。
ただし、むやみに強い衝撃を与えることは危険ですので注意が必要です。
軟骨への配慮をしながら、骨細胞の更新を促すための注意点
- 運動の種類:ランニングやジャンプなどの衝撃が強い運動よりも、ウォーキングや水泳など、関節への負担が少ない運動を選ぶことがおすすめ
- 運動強度:痛みを感じない範囲で、徐々に運動強度を上げていくことが大切
- 運動時間:長時間ではなく、短時間でも高強度の運動を繰り返す方が効果的
- 運動頻度:毎日ではなく、休養日を挟みながら、定期的に運動を行うようにしましょう
- 栄養:カルシウム、ビタミンD、タンパク質などをバランス良く摂取することで、骨の健康を維持できる
まとめ
還暦を迎えると、膝の痛みなど、関節の悩みを抱える方が増えてきます。
昔のように好きなスポーツを楽しんだり、お孫さんと一緒にお出かけするためにも、膝関節は大切にしたいものです。
最も重要なのは、膝関節を大切に使い、損傷させないことです。
しかし、加齢や様々な原因による劣化は避けられないこともあるかもしれません。
そうした場合でも筋肉の鍛錬は重要で、特に太ももの筋肉を鍛えることが大切と言われていますす。
太ももの筋肉は、膝関節を支える重要な役割を果たしており、筋力をつけることで膝への負担を軽減することができます。
ウォーキング、水泳、ヨガなど、自分の体力や興味に合わせて、無理のない運動を選ぶことが大切です。
正しい知識と適切なケアによって、膝の健康を維持し、快適な生活を送りましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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