皆さんは、琵琶湖周辺の八つの美しい風景を詠った『近江八景』をご存じでしょうか。
名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
今回は、その中の『石山秋月』で知られる石山寺を訪れてみました。
『近江八景』の1つとしての見どころをご紹介します。
7月の半ば、梅雨明けとは言えじっとり汗ばむ晴天の中でしたが、石山寺は「光る君へ」で盛り上がりを見せていました。平日とは言え早くから駐車場には車が散見されます。
石山寺は、「源氏物語」のはじまりの地として有名ですが、紫式部を始め古来より多くの文学者が訪れたことから「文学の寺」とも、また境内に四季折々の花が咲き誇ることから「花の寺」としても知られています。
近江八景の振り返りと、石山寺の見どころをご紹介できればと思います。
『近江八景』とは
『近江八景』とは、琵琶湖周辺の自然の風景と人間の営みが一体となった景観を指すもので、人々の心を癒し和歌や絵画の題材としても多く用いられてきました。
『近江八景』としては、平安時代後期から鎌倉時代にかけて成立したとされているそうです。
- 石山秋月: 石山寺から眺める中秋の名月は特に有名で、多くの文人墨客が歌や絵画で詠みこみました
残りの七景:
- 瀬田夕照: 瀬田川に沈む夕日が水面に映る美しい光景
- 三井晩鐘: 三井寺(園城寺)の鐘の音が夕暮れの湖面に響き渡る様子
- 唐崎夜雨: 唐崎神社周辺の夜雨の風景
- 比良暮雪: 比叡山に雪が降り積もる冬の夕景
- 堅田落雁: 堅田の落雁(お菓子)作りと、琵琶湖の風景
- 粟津夕照: 粟津の夕焼け
- 夏目澤風: 夏目澤のさわやかな風
この機に、残り七景も記憶の片隅に留めてみては如何でしょうか。
『石山秋月』とは?
歌川広重が「東海道五十三次」の中で「石山秋月」を題材にしたことで広く知られるようになりました。
そして広重の作品はモネやゴッホなど、西洋の印象派画家にも大きな影響を与えたと言われています。
石山秋月のメイン舞台は
石山寺で「石山秋月」と言えば、本堂から北西に多宝塔を抜けた先にある、「月見亭」がメイン舞台です。
地図で見ると「月見亭」から北を臨めば、瀬田川から琵琶湖に至る景観が広がることが伺えます。
「石山秋月」といえば歌川広重という連想になりますが、「石山秋月」は、より一般的な石山寺と秋の月という美しい風景を表現する際の名称と言われています。
事前学習の不足で、広重の浮世絵のアングルでの「月見亭」をイメージできるアングルでの観察が出来ませんでしたが、皆さんは、是非、広重アングルの「月見亭」も拝観してみては如何でしょうか。
残念ながら、「月見亭」は2017年に茅葺屋根から檜素材の板葺きへ改修されたそうで、写真の姿になっていました。
茅葺屋根の頃の写真を見つけましたので、リンクと共に貼り付けさせていただきました。
古人は、ここからの月見に様々な思いを紡いでいたのでしょう。
「石山秋月」は単なる風景描写にとどまらず、時の流れや人生の無常などを象徴する、より深い意味を持つ言葉としても捉えられてきたとも言われています。
石山寺と秋の月は、古来より人々の心を惹きつける美しい風景として認識されてきており、平安時代から和歌や物語など、様々な形で表現されてきており、石山寺自体が特別な舞台だったことが伺い知れます。
大河ドラマで人気スポットの石山寺!:他にも見どころがいっぱい
大河ドラマ、「光る君へ」で人気スポットの「石山寺」ですが、平日にも関わらず、9時過ぎの入園でも駐車場には10台前後の車が止まっていました。
透明感のある青空で、最高の空模様です。石山寺の他の見どころもご紹介しようと思います。
爽やかな青空の元、東大門が映えます。この東大門は源頼朝の寄進により建立され、その後、豊臣秀吉の側室である淀殿の寄進により、新築に近い形での大修繕されたそうです。
そして、東大門の仁王像は鎌倉時代の仏師、運慶とその息子の湛慶によって造立されたと伝えられているそうです。
本堂に向かうには、入場料が必要です。この季節は特別展があり、セット料金のチケットもありましたが、時間の都合で入場券だけ購入します。
「公風園」は、美しい庭園の一部で、四季折々の風景を楽しむことができ、「源氏夢回廊」の一部として利用され、オープンカフェ「カフェ ド ゲンジ」として開放されていますが、今回は横目で眺めて通り過ぎます。
「公風園」を過ぎると、参道をすぐに右に階段を上り、国宝で滋賀県最古の木造建築物の本堂に向かいます。
本堂の拝観は別料金でしたが、今回は拝観させてもらう事にしました。
ご本尊の「如意輪観音」は日本唯一の勅封の秘仏とのことで非公開です。その代わりの「お前立様」をお参りします。
本堂では、真言宗開祖の弘法大師を始め、毘沙門天、二天像、等の多くの仏像が出迎えてくれます。拝観料に見合う満足感がありました。
本堂から右に上ると、多宝塔が立派な佇まいで迎えてくれます。
石山寺の多宝塔も源頼朝によって寄進され、日本における現存最古の多宝塔とされています。
石山寺は、その名の通り石の山の上に建つお寺で、境内の本堂前には天然記念物の「硅灰石(けいかいせき)」がそびえ立っており、本堂や多宝塔はこの「硅灰石」の上に建てられているそうです。
「月見亭」を右手に見ながら、坂道を進むと豊浄殿で「石山寺と紫式部展」が春・夏・秋に開催されています。
さらに進むと立派な建築の「光堂」が現れます。
この先を左に下ると、話題の紫式部の像が現れます。
紫式部はお仕えしていた中宮・彰子の要望を受け、新しい物語を作るために石山寺に七日間参籠したそうです(諸説あり)。その時、琵琶湖の湖面に映った十五夜の月を眺めて、須磨の「今宵は十五夜なりけり」の一節を書き出したことが、「源氏物語」の始まりだったと言われています。
まとめ
近江八景の中の『石山秋月』をテーマに石山寺を見ると、歴史的な重さを感じます。
そして、「光る君へ」という旬な石山寺という側面でも、見どころがたくさんあります。
催しも多く、是非皆さんも一度訪ねてみては如何でしょうか。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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