猛暑や豪雨など、異常気象が頻繁に起こるようになった昨今、『地球温暖化』という言葉はもはや私たちの身近なものとなりました。
そうした状況でも、未だに「本当に人間の活動が原因なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
正直なところ、私も最近まで疑心暗鬼だったのです。
しかし、実はこの10年でこうした疑問に対する議論は既に決着していたのです。
今や科学者たちは、地球温暖化の主原因が温室効果ガスであることを、確かな証拠に基づいて結論付けています。
今回は、地球温暖化の現状と、科学的な事実・根拠を分かりやすく解説し、私たちが直面している状況と、なすべき対応について考えていきたいと思います。
今この地球に起きている事 (「地球の自然な営み」の延長線上にはない異常事態)
地球の歴史は、長い時間をかけて氷河期と温暖期を繰り返してきたことは皆さんもご存じかもしれませんね。
そして、これまでの気候変動は、数千年から数万年という、とても長い周期でゆっくりと変化していくものでした。
恐竜が絶滅したと言われる6600万年前以降の新生代の気候変動ですらこの範囲内での変化だったのです。
ところが、現在の温暖化は、過去数千年から数万年の変化と比較して、非常に短期間で急速に進んでいるのです。
気象庁ホームページに記載の、「IPCC AR6 WG1報告書 技術要約(TS)暫定訳(2023年3月9日版)」の抜粋を示します。
これは国際的なコンセンサスとして、IPCCで共有されている科学的な事実なのです。
過去数千年から数万年の間、現在のこれほど短期間で、これほど大きな気温上昇は観測されてないのです。
上の図表で重要なのは、近年の時間軸とそれ以前の時間軸は全く異なり、左は数字✖百万年で、真ん中は数字✖千年での気温変化ということです。
このような急激な変化は、地球の歴史において異質なものであり、地球の自然な営みを超えた異常事態と言えるものなのです。
そして、われわれは日常的に下記のような異常気象や環境危機に遭遇しながらも尚、その真の原因について十分な理解が出来ていない人が少なくないのではないでしょうか。
- 地球の熱中症: 記録的な高温、異常気象の増加
- 海のSOS:海面上昇、サンゴ礁の白化現象、海洋酸性化
- 極地の危機: 海氷の減少、永久凍土の融解
これらの自然現象は、たまたま近年多発しているのでも、偶然の散発的な現象が集中しているのでもありません。
これら全ては、ほぼ人類が排出した温暖化ガスによる地球温暖化との関連で説明できるものばかりなのだそうです。
地球温暖化と異常気象の関連例にてついて
異常気象と地球温暖化との関連性については、相互に複雑に関連することもあり少し長くなってしまうので、詳しくは別の記事にまとめる予定ですので、良かったらこちらもご覧ください。
又、その記事の中では、地球誕生の46億年前から現在に至るまでの、「先カンブリア時代」、「古生代」、「中生代」、「新生代」に至る地球の歴史における地球環境の情報もご説明していく予定です。
この10年で劇的に進歩した地球環境に関する科学的な研究とは
10年以上前には、温暖化の原因については科学者の間でも異なる見方があったのは事実だったようです。
しかし、この10年で下記のような研究の積み上げにより、地球環境予測の精度は飛躍的に高くなったのです。
- 観測データの精度の向上: 気温、海面水位、二酸化炭素濃度などの観測データの精度が飛躍的に向上し、地球温暖化の進行がより正確に把握できるようになりました。
- 気候モデルの高度化: 気候変動をシミュレーションする気候モデルの解像度が向上し、より詳細な予測が可能になりました。これにより、人間活動が気候変動に与える影響をより正確に評価できるようになりました。
- 極端現象の分析:熱波、豪雨、干ばつなどの極端現象の頻度と強度が、気候変動との関連性において統計的に有意な変化を示す研究成果が数多く発表されています。
- 過去の気候変動の解明:氷床コアや樹木年輪などのデータ解析により、過去の気候変動の詳細が明らかになり、現在の温暖化が異常に早いスピードで進行していることが裏付けられました。
とりわけ、阿部彩子先生が2013年にネイチャー誌に掲載された「Insolation-driven 100,000-year glacial cycle and hysteresis of ice-sheet volume.」(人類が経験した最大の気候変動、10万年周期の氷期-間氷期サイクルのメカニズムを解明)という論文は、地球の気候変動理解において非常に重要な発見をもたらしたと言われています。
この研究は、過去の気候変動を詳細に再現しました。またこの研究を起点に、将来の気候変動予測の精度が大幅に向上し、地球温暖化の予測もより正確になったのです。
次世代により良い地球を引き継ぐために、正しい認識で現在の温暖化を理解すべき時ではないでしょうか。詳しく見ていきましょう。
温暖化ガスが、現在の地球温暖化の主要な大きな原因であると「断定」できる科学的な根拠について
地球の気温変動は、太陽の周りを複雑に描く地球の軌道、太陽活動、火山活動、そして温室効果ガス濃度の変化など、様々な要因が組み合わさって起こります。
しかし、近年の温暖化や異常気象は、人類が排出した温暖化ガス以外の自然活動では説明が出来ないことが明らかになってきたのです。
この10年の多面的な研究により、データの信頼性、シミュレーションの精度など科学的な知見が劇的に高い精度で得られるようになりました。
- 観測データの一致:過去数十年の間に観測された地球の平均気温の上昇は、温室効果ガスの増加と一致しており、特に産業革命以降の急激な気温上昇は、自然要因だけでは説明できない
・人類が産業活動によって排出する温室効果ガス濃度は、近年、高精度な観測によって詳細に把握されている
・産業革命以前の自然変動による温室効果ガス濃度の変動は、氷床コアや樹木の年輪などの間接的な証拠に基づいて推定されており、その精度向上には日々努力が続けられている - 気候モデルの高精度のシミュレーション: 人間活動による温室効果ガスの増加を考慮した気候モデルは、観測された気温上昇を正確に再現している一方で、自然要因のみを考慮したモデルでは、観測された上昇を説明できない
- IPCCの評価報告書:国際的な科学者のコンセンサスを反映した報告書は、非常に高い信頼性で裏付けられている
- 大気中のCO2濃度の増加:産業革命前のCO2濃度は約280ppmでしたが、現在は400ppmを超えており、この急激な増加は人間活動によるものであることが分かっている
- 古気候データ:過去数千年の気温データが再現が出来るようになり、この分析により現在の温暖化は異常に速いペースで進行していることがわかる
そして今や、国際的な科学者のコンセンサスとして、「人類の排出した温室効果ガスの増加により、地球の気温が上昇した」ことが科学的に結論付けられているのです。
現在では、「人類の排出した温暖化ガスが地球温暖化の原因である」ことを疑う気象学者はいないとまで言われているのです。
この10年での地球温暖化に関する研究の詳細に関して(別記事にて説明)
この10年での地球温暖化に関する研究に関しては、説明が長くなってしまうので、別記事で詳しくご説明していく予定です。ご興味があれば覗いてみてください
なぜ「現在の温暖化の犯人が人類である」ことに対して懐疑的な主張する人がいるのでしょうか?
気象学者のほぼ全てが「温暖化の犯人が人類である」と確信しているのに、依然としてそれに異を唱える人たちがいるのには理由があります。
短期的な利害と経済的な意図を持ち「懐疑的な意見を唱える人々」が対立構図を演出し混乱を招く
現在の国際的な科学コミュニティにおいても、この結論に異を唱える声はごくわずかですが存在します。
これらの異論には下記のような背景があるようですが、これらの主張は、科学的な方法論に沿った厳密な検証を経ることで、その誤りが明らかになっているそうです。
- 経済的な影響: 化石燃料産業など、温室効果ガスの排出に関わる産業への影響を懸念する声があります
- イデオロギー的な理由: 個人や団体の思想や価値観に基づいて、人為的な気候変動を否定するケースがあります
- データの恣意的解釈:特定のデータだけを取り上げて、自分の主張を裏付けようとするケースがあります
- 陰謀論:気候変動の科学が捏造されているという陰謀論を信じる人もいます。
- 科学的な誤解:科学的な知識が不足しているために、誤った情報に基づいて懐疑的な立場を取る人もいます
- 科学的な誤解に基づく主張:
・太陽活動の変化が主な原因であるという説は、観測データと一致しません
・自然変動だけで現在の温暖化を説明することは困難です
代表的な懐疑論と科学的な反論
「太陽活動が主な原因」という主張
太陽活動が地球の気温変動に影響を与えることは事実ですが、近年の急激な温暖化を説明するには不十分です。
- 太陽活動と気温の関係:過去には、太陽活動の低下と地球の寒冷化が一致した時期(マウンダー極小期)がありました。しかし、現在の温暖化は、太陽活動が減少傾向にあるにもかかわらず、進行しています
- 観測データの矛盾: 大気の低い層では気温が上昇している一方で、太陽に近い成層圏では気温が低下しているという事実も、太陽活動が主な原因ではないことを示唆しています
- 気候モデルの予測:気候モデルは、温室効果ガスの増加がなければ、現在の温暖化を再現できません
「過去の気候変動は自然なサイクル」という主張
地球の気候は、過去にも自然な変動を繰り返してきました。しかし、現在の温暖化は、その速度や規模が異常に速く、自然な変動だけでは説明できません。
- 変動の速度:過去の気候変動は、数万年~数十万年の周期でゆっくりと変化していました。現在の温暖化は、わずか数十年で急速に進行しています
- 原因の違い:過去の気候変動は、主に地球の軌道変化や火山活動などによるものでした。現在の温暖化は、温室効果ガスの増加が主な原因です
「気温データは操作されている」という主張
世界中の複数の気象機関が観測を行っており、そのデータは厳密な品質管理の下で解析されています。衛星観測データも地上観測データと一致しており、気温上昇の事実を裏付けています。
「コンピュータモデルは信頼できない」という主張
気候モデルは、物理法則に基づいて作られており、過去の気候変動を再現できる精度が向上しています。複数の気候モデルによるシミュレーション結果が一致していることから、信頼性が高いと言えます。
大気の0.04%に過ぎないCO2の影響は軽微という主張
- 二酸化炭素の増加は、海洋の酸性化や生態系の変化を引き起こし、負の影響も大きいことが懸念されています
- 大気の成分比は少ないですが、温室効果ガスとしてのCO2の能力が非常に高いため、地球の気温を大きく変えることができます
- 気候モデルのシミュレーションでも、人間活動によるCO2増加を考慮しないと現在の気温上昇を説明できません
こうした懐疑論は、ウィキペディアにも「地球温暖化に対する懐疑論」として数々の主張が掲載されていますが、それらのほとんどは科学的反論により否定されているようです。
多くの人が、現在の最新の科学的知見を正しく理解していない理由
国際的な科学コミュニティにおいて、「地球温暖化は人間のせい」ということは科学的な事実と認識されているにも関わらず、未だに私のように「本当にそうか」と疑う人は少なくありません。
その理由は様々ですが、およそ下記のことが障害となっていると考えられます。
- 10年以上前の「本当はどうだかわからない」、という古い情報に対して、最新の科学で明らかになったことが明確に知らされる機会が無かった
- 未だに怪しい懐疑論を唱える人も少なからず存在する
- 専門性の高さと情報過多により、、本当に正しい情報にたどり着くことが容易でない時代でもある
・IPCCのような国際機関に対する信頼が低下している現状や、情報発信の透明性に対する懸念が課題
・科学的な情報をより分かりやすく、そして公平に伝える機会が少ない - 何より、政府、学界、メディアなど、様々な情報主体による、科学的な情報をより分かりやすく、そして公平に伝える努力が大きく不足している。
メディアは、日々の異常気象を盛んに面白おかしく伝えますが、真の原因の掘り下げや根幹の行動変容への啓蒙の報道はほとんど見かけることはありません。
今は、既にそこから生まれつつある致命的で危機的な状況を理解するべき時代だと思うのですが、、、。
立ちふさがる世界的な経済較差と目先の利益追求:課題と対策
地球温暖化問題は、もはや世界規模の喫緊の課題であり、その解決には経済的な側面、特に世界的な経済格差と短期的な利益追求とのバランスが大きな課題となりそうです。
経済格差による対策の遅延
経済発展途上国では、経済成長を優先せざるを得ない状況から、環境規制が緩やかになりがちです。
先進国と途上国間の経済格差は、環境問題に対する責任の分担をめぐる対立を招き、国際的な合意形成を困難にします。
先進国においても、目先の経済成長に対する取り組みへの判断は多様です。
➡気候変動枠組み条約などの国際的な枠組みを強化し、各国が共同で目標を設定し、協力体制を築くことが重要
先進国は、途上国の経済発展を支援しつつ、環境技術の移転や資金提供を行うことで、国際的な協力体制を構築すべき時ですね。
技術開発の限界
新しい技術の開発には、巨額の投資と長い時間がかかり、必ずしも全ての環境問題を解決できるとは限りません。
短期的には、社会システムや人々の行動変容を伴う広範な取り組みがなければ、効果的な対策には繋がりません。
➡再生可能エネルギーやエネルギー効率の高い技術の開発を促進し、脱炭素社会の実現に向けて取り組む必要があります。(再生可能エネルギーの是非についても、別途こちらでご説明します)
民間企業や研究機関の連携を強化し、革新的な技術開発を後押しすることが重要です。
短期的な利益追求と長期的な視点のバランス
企業や政府は、しばしば経済的な短期的な利益を優先し、環境問題への対策を後回しにする傾向があります。
このような短期的な視点が、地球温暖化問題の深刻化を招いている一因となっていることへの、国民レベルでの理解と行動変容が必要な時だと感じます。
教育と啓発
気候変動問題の深刻さを国民に広く周知し、一人ひとりが環境問題に関心を持ち、行動を起こすことが重要です。
学校教育において、持続可能な開発に関する教育を強化し、次世代を担う子どもたちに環境意識を育む必要があります。
経済システムの改革
環境負荷の大きい産業への規制を強化し、環境に配慮した経済活動へと転換を促す必要があります。
環境負荷の大きい製品やサービスに対して課税を行うなど、経済的なインセンティブを活用することで、環境への配慮を促すことができると言われています。
まとめ
地球環境問題において特に重要なのは、ある個人の分別ある行動ではなく、全人類の圧倒的多数が、問題意識をもって行動できるかどうかが問われる、危機的局面であることの理解が重要です。
その意味で、「今日の地球温暖化は人間のせい」であることを、一人でも多くの人が確信をもって理解し、多くの周囲の人に同様の理解を促せるかどうかということが重要考えます。
私も不勉強で数日前まで、人類が排出した温暖化ガスが本当に地球温暖化の主体瑠原因かどうかについては懐疑的だったのです。
将来の子供たちの住む地球環境を考えると、目先の利益や経済活動に対する価値観を変えるくらいのインパクトがあることだと感じています。
問題意識のある一部の行動で何とかなる時は過ぎており、圧倒的多数の人類の行動が必要な時だと感じます。
まずは、事実を確信をもって理解し、出来る行動を考えてみませんか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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