【絶景パノラマ・唐松岳登山】初心者・シニアも安心|黒菱車中泊→八方池→山小屋泊の2泊3日体験記

山歩き

北アルプス後立山連峰にそびえる 唐松岳(2,696m) は、“北アルプスの展望台”と呼ばれる絶景の名峰です。

八方尾根ルートはゴンドラ・リフトで標高を一気に稼げるため、初心者やシニアでも安心して挑戦できる人気コース。今回ご紹介するのは、黒菱駐車場での車中泊から八方池を経由し、唐松岳頂上山荘に宿泊する2泊3日のプランです。

山頂から望む360度の大パノラマは圧巻。南に五竜岳、北には険しい「不帰ノ嶮」と白馬三山、さらに剱岳や立山、天気次第で遠く白山までも見渡せます。

私たちは、8月下旬にシニアのそれなりの経験者を中心とした12名でこの山を訪ねてきました。

この記事では、実際のルートや所要時間、山小屋情報、服装の目安や混雑状況まで詳しく紹介します。これから唐松岳を目指す方に、安心して計画できる実践的な情報をお届けします。

私たちのプランと山行記録

  • 初日、車で行ける最高点の黒菱駐車場に22時ごろ到着車中泊
  • 翌朝、「黒菱ライン」という2本のリフトで登山口となる「八方池山荘」へ
  • そこから「八方池」を経由して「唐松岳頂上山荘」に向かいます(標高差約800m)
  • 翌朝「唐松岳」への頂上アタックでご来光を拝みました
  • 宿に戻り、朝食後、下山し、近くの温泉に入って帰途につきました
国土地理院地図に追記

私たちの当日の山行の記録

登山口は、リフト終点で標高約1820m「八方池山荘」です。ここから標高約2060mの八方池までは標高差240m程度はハイキングレベルの登りで、少し山歩きに慣れた人なら60分前後の工程です。8:20スタート。

グラートのリフトを下りたら、八方池山荘

八方池までは、なだらかでほぼ一方通行で歩きやすい木道コースと少し不安定な岩場のコースがあり、私たちも二手に分かれて登りました。木道コースの方が楽に速く歩けますが、白馬三山や不帰ノ嶮の景色を楽しみながら登るなら右側の岩場のコースがお勧めです。

結局、白馬三山が見えたのは登り始めのこの時だけ

八方池は水面に写る「逆さ白馬三山」の映えスポットで有名です。この日は三山はガスで隠れてしまいましたが、不帰ノ嶮はバッチリきれいに映り込んでいて大満足でした。

逆さ「不帰ノ嶮」:3峰・2峰・1峰と天狗の頭

私たち12人のグループは、八方池までは早目の人で約40分、ゆっくりの人は約70分かかりました。平均年齢70歳ぐらい、最高齢は80歳なのでペースとしてはこんなもんでしょうか。八方池でゆっくりして出発は9:45です。

八方池を過ぎても人の数は殆ど減少する感じはなく、みな山頂を目指しているようです。平日の登山道にしては結構な賑わいでした。

ガレたトラバース:この先お花畑満開

八方池から山小屋(2620m)までは標高差で560mの登りで、八方池までのハイキング気分から、一気に登山モードになります。

大きな雪渓が残るエリアは絶好の休憩場所

山頂への道のりは、丸山ケルンまでは山腹のトラバースを含むジグザグが続き、丸山ケルンからは爽快な稜線歩きが楽しめます。

蛇紋岩のガレた岩は荒々しいが、稜線歩きは最高

この稜線歩きが、この登山の醍醐味の一つで、山頂に向かって右側は氷河を見下ろしながら急峻に切れ落ちてスリリングな景色と共に、右正面には左から唐松岳、「不帰ノ嶮」の3峰、2峰、1峰、天狗の頭、更に右に白馬三山が続く抜群の眺望が続きます。

荒々しい岩稜、不帰ノ嶮の下方には「氷河」
ここで谷底に見える白いものは残雪

山頂までのタイムは、体力や山歩きに慣れてるかどうかで大きく変わります。私たちの山小屋到着は何と13時過ぎになってしまいましたがこれには訳があり、八方池からだとシニアでもだいたい2~3時間で登れる山だと思います。

つまり、↓の看板を目安にすれば多くの人はタイム内で登頂できる感じです。

黒菱第3ペアリフト横の看板

山小屋に到着した時にはほとんどガスが立ち込めて、唐松岳が瞬間顔を出す程度だったので、この日の午後は懇談の時間を過ごし、翌朝に唐松岳ご来光期待で山頂アタックすることになりました。

翌朝は9時ごろまで曇り予報で、出発時は周囲はガスに覆われていて少し心配しましたが、真上を見ると星が見えていたので、5時過ぎのご来光を期待して4時過ぎに山小屋を出発しました。

遠くに剣岳や立山と、朝日を浴びる唐松岳の山腹

山頂到着時はガスが覆っていましたが、徐々に剣岳や五竜岳も見え隠れしつつ、日の出の時刻を過ぎて東の空に太陽が顔を出すとあっという間にガスが抜けて、5時半ごろには絶景眺望が広がり、誰もが「来てよかった」と感動に包まれました。

唐松岳から唐松岳頂上山荘を望む:テント場は結構下る

山小屋に戻り、6時の最終組の朝食を頂き、7時半には満足の下山開始となりました。

牛首の向こうに五竜岳の雄姿を望む

下山中も丸山ケルンまでの稜線歩きの間は感動の眺望を楽しむことができました。そこからは八方池を含めてずっと雲り空とガスに覆われていましたが、おかげでこの季節にしてはかなり涼しく快適で、YAMAPのコースタイムに少し遅れるくらいで下山することができました。

帰路の稜線も爽やか

この時間の下山でも既に登りの人たちとのすれ違いが始まり、丸山ケルンを過ぎて少し進んだ8時半ごろには100人ほどのすれ違いで数分間に及ぶ人生最大の足止めに遭遇しました。

結局この登山中は白馬三山はほとんどガスの中でしたが、五竜岳や剣岳はきれいにその姿を見ることができ大満足の山行となりました。

この日は土曜日で、12時ごろの黒菱駐車場はほぼ満車でその人気を物語っていました。土日の黒菱駐車場は出遅れると大変かもしれませんね。

土曜日の黒菱駐車場は数台の空きはあるもののほぼ満車

この後、白馬の温泉に入って満足の帰途に着きました。

唐松岳登山に関するお役立ち情報

日帰り登山の向き・不向き

唐松岳は、入門の山というには、平均的なシニアには少しハードルが高い印象です。登山口から標高差が800mに及ぶので、日帰りの計画の際は、ご自身の過去の経験に照らして判断しないと後悔することになるかも知れません。

日帰りするなら登山口の「八方池山荘」泊で、早目の出発を選択肢に入れるものいいかもしれません。

特に、平日の日帰りは、リフト運行時間が最大で約9時間で、その中で山頂までの往復をして、しかも休憩時間や、食事、余裕時間を考慮すると、登り4時間、下り3時間がほぼ必須となります。私たちの今回のメンバーでは無理でした。更に意外な盲点が、混雑による山道の渋滞ですので、時間の余裕は多めに見ておく必要があります。

「八方池山荘」泊のメリット:

  • 7~8時くらいに山頂に着くように早朝出発が可能で、登山中のすれ違いがなくストレスなく歩ける
  • 何より早朝の山頂はガスが上がる前で、絶景眺望を望める可能性がかなり高くなります
  • 山頂でゆっくりして、余裕をもって下山することができます

「八方池山荘」泊時の課題:

  • その日のうちに山頂までの往復となるので、早めに下山したとしても、近畿圏など遠隔地への帰宅となると、体力的に運転に不安が生じそう
  • 体力的に不安だと、更に1泊必要になるかも(他に観光予定が有れば問題なし)

しんどさレベル

黒菱第3ペアリフト横の看板(上述)の時間であれば、多くの人がクリアできそうです。
(YAMAPのコースタイムより30~60分ほどの余裕がありそうです。)

登山口まで車、ゴンドラ、リフトでアプローチできるので、ある程度山歩きに慣れて、相応の体力さえあれば、安全上は特に危険な場所はなく、道迷いもほぼありません。ただ、標高差800mというのは体力がない人やシニア層には少しハードかもしれませんが、小学生でも元気に登っている山でした。

8月中旬の気温と服装の目安〔麓、中腹、山頂〕

年により、日により気温は変化するので参考程度ですが、白馬村の麓の気温に対する目安は:

  • 黒菱駐車場:約5℃低い
  • 八方池:約7℃低い
  • 唐松岳頂上山荘:約12℃低い

私たちが訪れた8月下旬は、黒菱駐車場の22時の気温は15℃程度で、唐松岳頂上山荘の早朝の気温は10℃くらいでした。黒菱駐車場で出会った若者たちは半パンTシャツで震えていましたので、皆さんお気を付けください。ダウンやフリース、又はレイヤーで対応しましょう。

山小屋「唐松岳頂上山荘」について

良い点

  • 日帰りの場合、リフトの最終時刻16:30に対して、体力に自信のない人や高齢者には余裕がないので、安全面では山小屋での宿泊が無難です。
  • 朝早めに下山すれば、そのまま帰途に着いても、大阪ぐらいまでなら比較的楽に帰れます。

少し残念な点:(2025年8月北館、相部屋での実績)

決してネガティブな意味ではなく、実態をお知らせしたいだけですのでご容赦ください。

一部屋2万円前後のプラスで個室にすれば多くの問題が解決すると思いますが、部屋数は限られており、電話予約と予約金の入金が必要で、2名以上が条件のようです。詳しくは山小屋HPへ。

  • 諸物価高騰により山小屋料金はどこも高騰してます(相部屋で15000円)
  • 相部屋の寝床は70-75cm/一人程度で、隣の人と仕切りがないので、夜中に頻繁に押されて眠れないリスクが高いです(約90cmの敷布団4枚で5人が寝ます:2025年8月北館での実績)
    何処までが自分の範囲か不明瞭なので、隣人次第ではかなりツライ状況になりそうです
  • 上下二段の寝床の真ん中に廊下があり、就寝時間を過ぎても頻繁に人の通行があり、気になる人はなかなか寝付けません(廊下側の間仕切りはカーテンのみ)
  • 男女は分かれてたようですが、周囲の話し声が絶えず、特に女性はずっとしゃべってるグループがありました
    (消灯は21時で、以降は静かになりましたが、誰かが廊下を歩く音は頻繁にします)
  • いびきの音は結構響きますので、隣人の当たり外れで、寝付けないリスクがあります
  • 北館には談話スペースがなく、外にベンチもないので、どこかに座って談話するには本館の食堂などへの移動が必要です
  • 北館の2階のベッドの階段はHPの写真と違い垂直で、荷物を上げるのは一苦労のようです
  • ソフトバンクは電波が完全にダメでした(docomoはOKで、sb意外はギリ?)
  • 缶ビール350mlは800円、水は500円です(水場がないし、高地なので仕方なし)

テント泊について

価格面と、隣人リスクを考えると、天気が良ければテント泊という手段もいいですが、最近の事例ではクマさんが出没した実績があるそうです。又テン場では火気厳禁なので調理は予約の上、山小屋内で行う必要があります。
又、テン場は、山小屋からそこそこ下るので、頻繁にトイレに行きたい人には少し厳しいかもしれません。

唐松岳への登山者の多さと山道の混雑情報

私たちが訪れたのは、8月下旬の木曜日の夜でしたが、200台収容可能な黒菱駐車場は、翌朝(金曜日)には4割ぐらいの車で埋まっていました。

平日でしたが、八方池を目指す人と共に、その先の唐松岳に向かう人も結構な割合で多く、山頂に向かう登山道は所々で渋滞が発生するほどです。丸山ケルンを過ぎて尾根歩きになる前後くらいからは休憩する人が多くなり、少し歩きやすくなりました。

昨今の登山ブームの影響なのか、唐松岳が人気なのか、想像と違って結構な賑わいでした。夏休みという事もあり、小さなお子さんの元気な姿も印象的でした。

登山口「八方池山荘」までのアプローチについて

登山口の「八方池山荘」までのアプローチは、二つの方法があります。

①車で黒菱駐車場に車を停めて、黒菱第3ペアリフト、グラートクワッドリフト乗り継ぎ

  • 駐車場無料、リスト代往復2300円(大人)、1400円(小児)
  • リフト運行時間:7:45~16:40(平日)、4:30~16:40(土日祝)、詳しくはこちらの八方尾根HPへ

➁麓の駐車場からゴンドラとリフトを乗り継ぎ

  • 駐車場:
    ・無料:八方第9駐車場、八方第3駐車場など、ゴンドラ乗り場から離れた場所
    ・有料:A駐車場、B駐車場、C駐車場、ゴンドラ乗り場付近で1,000円/日
  • ゴンドラ+リスト代往復3400円(大人)2200円(小児)、運行時間など詳しくはこちらの八方尾根HPへ

ゴンドラに乗りたい場合以外は、車利用なら黒菱駐車場まで車で行くのが、安くて便利でお勧めです。
※料金や運行時間は、2025年8月時点の情報です。詳しくはご自身でご確認ください。

雷鳥との出会いの可能性、高山植物の魅力について

  • 雷鳥:今回私たちは出会えませんでしたが、八方尾根から唐松岳の往復の稜線では、雷鳥との遭遇の実績は少なからずあるようですので、山の斜面やハイマツの周囲を注意しながら観察してみましょう。
  • 高山植物:8月下旬の山行でしたが、まさに高山植物が真っ盛りで、数えきれない花々がそこかしこに咲き乱れており、多くのカメラマンの方が熱心に撮影していました。八方尾根の高山植物は300種類を超えるそうで、それを目的に登ってもいいぐらいです。
    私達も、今回の山行で、ハッポウウスユキソウ(エーデルワイスの仲間)、チングルマウメバチソウイワカガミマツムシソウハクサンシャジンシモツケミヤマダイモンジソウなど、知っているだけでも多くの高山植物を目にしました。

「唐松岳頂上山荘」の予約について

予約は1か月前からの受付ですが、平日以外は競争率がかなり高いので、受付可能時間になったら全力で頑張らないと厳しいようです。詳しくは山荘のHPの情報をご確認ください。

「不帰の嶮」について

唐松岳の北側には、白馬岳へと続く「不帰ノ嶮」が控えています。名前の通り「帰ることができない」ほどの危険な岩稜帯として知られ、熟練者向けの難所です。八方尾根の穏やかな道から一転、険しい岩場と鎖場が続くこのルートは、唐松岳が後立山連峰の懐深く、そして険しい領域への入り口であることを示しています。

稜線から不帰ノ嶮を望む

経験者かつ好条件限定でヘルメット・グローブ必携、午後の風雨・雷の前に切り上げ判断などが必要です。後立山連峰は北アルプスの中でも遭難件数が多い山域で、年間50件を越えるほどの遭難報告があるようです。くれぐれもご注意ください。

稜線歩きの際に、ずっと「不帰ノ嶮」の3峰、2峰、1峰が出迎えてくれていますので、入門者はその景色で満足するのが賢明です。

安全のコツ

  • 天気と風:稜線は体感温度が下がります。風速10m/s超なら撤退判断も
  • 高所順応:リフトを降りたら歩き出しをゆっくり、呼吸を深く
  • 時間管理:活動は午前中主体(午後は天候が崩れるリスクが高い)
  • 装備:軽量レイン上下、防寒(薄手ダウン/フリース)、手袋、帽子、サングラス、日焼け止め、ポール
  • 滑落・転倒対策:濡れた木道・石畳はストック短め&小股歩き
  • 水と塩:涼しくても脱水に注意。行動食+経口補水をこまめに
  • 下山後ケア:ロープウェイ駅でのストレッチと補給で翌日の疲れを残さない

下山後のお楽しみの提案

温泉

白馬エリアには豊富な温泉があり、それぞれ泉質や眺望に特徴があります。

  • 白馬八方温泉:アルカリ性単純温泉で「美人の湯」として知られ、肌に優しいのが特徴
    ・八方の湯やおびなたの湯など、露天風呂から北アルプスを望める温泉施設が人気です
  • みみずくの湯:白馬三山を正面に望む絶景露天風呂です
    ・夕暮れ時の入浴は格別で、唐松岳を振り返りながらゆったりと疲れを癒せます
  • 倉下の湯:茶褐色の湯が特徴で、ナトリウム塩化物泉です
    湯上がり後も体がポカポカと温かさが続くのが魅力です

グルメ

蕎麦:白馬の冷涼な気候はそば栽培に適しており、地元の打ち立てそばは香り高くオススメの一品です。並んでいる蕎麦屋さんはだいたい美味しいです。

観光

  • 白馬ジャンプ競技場:1998年の長野五輪で使用された施設です
    リフトで展望台に上がれば、白馬の街並みとアルプスの眺望を楽しめます
  • 大出の吊橋:白馬三山と村の風景を一望できるフォトスポット
    春は新緑、秋は紅葉と四季折々の景観が魅力です
  • 青木湖・木崎湖:透明度の高い湖で、カヌーやSUPなどのアクティビティも楽しめます
    「ao」という青木湖のほとりのカフェは、映えスポットとなっています
  • 白馬岩岳マウンテンリゾート:グリーンシーズンには「絶景ブランコ」やマウンテンバイクが人気です
    山頂テラスからの北アルプスの大パノラマは必見です

まとめ

大阪では夏真っ盛りですが、白馬の気温は低めで、山の上は別世界でした。

今回はお天気にも恵まれ、存分に絶景を満喫することができました。

今回、私たちの参加者12名の内3名が足をつってましたので、脚力に自信のない方は「コムレケア」などの薬の携帯をお勧めします。もちろん、水分補給が特に重要なのは言いうまでもありません。

唐松岳は、少しばかり足腰に自信があれば安全に登れ、お天気次第の部分もありますが、比較的簡単に最高の登山の経験ができます。

ただし、山頂の気温や降雪のリスクがありますので、天候の確認は必須です。入門程度の山登りなら、山頂の最低気温が5~10℃以下になる季節は見合わせるのが無難です。

みなさんも、体力に合わせてプランしてみては如何でしょうか。

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