気温が30℃を超えるようなランニングは、シニアにとって命に関わるリスクがあります。私自身、先日5km程度の軽い距離でも体調を崩し、改めて危険性を実感しました。
この経験から、シニアが高温多湿や低温の環境で運動を行った際に起こりうる生理的リスクについて調べたところ、思ったよりダメージが大きいことが分かりました。
健康のために始めたはずの運動が、かえって体を壊すリスクをはらんでいるのです。特にシニア世代は注意が必要です。
この記事では、暑さや寒さがシニアの身体に及ぼす影響や、脱水や血栓などのリスク、そしてリスクが少ない運動のポイントについて詳しく解説します。
適度な運動は健康維持に欠かせませんが、亜熱帯化が進む日本の気候では環境に応じた適切な運動管理が必要です。健康のための運動が逆に身体に負担をかけないよう、この記事を参考にしてみてください。
【注意】高温(多湿)がランニングがもたらす重大な健康被害
高温多湿な環境でシニアがランニングを行うことは、熱中症、脱水、血栓など複数の健康リスクを複合的に引き起こすため大変危険です。
- 加齢により体内水分量が減少し、喉の渇きを感じにくくなるため、短時間で脱水状態に陥ります
- 大量発汗により水分とナトリウムが同時に失われ、血液は濃縮して粘度が上昇、血栓や臓器虚血のリスクが急速に高まります(暑熱下では体重の2%以上の水分が失われることもあります)
水分とナトリウムを失うことで、私たちの身体で起こる不具合
- 血管内で起きること
・脱水による血液量減少(低循環血液量)
・体は血液を中心部に集めようとして血管を縮めます
・脱水により血液中の水分が減ると、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります
(➡脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気を引き起こすリスクが高まります)
・また、血液量が減ることで血圧が下がり、ショック状態に陥る危険もあります - 心臓で起きること
・ドロドロになった血液を全身に送り出すため、心臓はより強く、より速く拍動しなければなりません
・これにより心臓に大きな負担がかかり、不整脈や心不全、心筋虚血ののリスクが高まります
・特に、心臓に持病があるシニア世代は、この負担が命に関わる事態に繋がる可能性があります
・心臓への静脈還流量が減り、心拍出量が落ちます - 腎臓で起きること
・尿の生成が抑制されている状態が続くと、腎臓への血流が減り、ろ過機能が低下します
・これにより、体内に老廃物が溜まり、急性腎不全を引き起こす危険性があります - 脳で起きること
・脳への血流も減少するため、めまいや意識障害、熱中症の重症化を引き起こしやすくなります

予防のためには高温多湿でのランを避け、涼しい時間帯や室内での運動を選択しましょう。
適切な環境で運動する時も、スポーツドリンクや経口補水液で水分・電解質を補給し、異常を感じたら即座に中止・冷却・休息し、必要に応じ医療機関を受診しましょう。
シニアにとって適切なランニング環境とは
- 気温15℃前後(10⁻20℃、湿度50〜70%程度) : 最適・推奨条件
- 気温20〜25℃ : ペースを落とし、水分+塩分補給必須
- 気温25℃以上+湿度高 : 原則回避、特にシニアでは無理に走らない
- 気温5℃以下 : 朝は避け、昼間や屋内で走り、走る時はウォームアップ・防寒を徹底します

どのあたりを限界とするかは、個人の感覚が重要ですが無理は禁物です。
- 25℃以上で高湿度:熱中症、血液がドロドロになり血栓リスクが増加し、不整脈リスクもあります
- 5℃以下:シニアでは動脈硬化の懸念から心筋梗塞や脳卒中への配慮が必要となります

湿度や日射も考慮した「暑さ指数(WBGT)」を参考にすることも有効ですが、ランニングはそれ以前に安全な範囲で判断しましょう。
「低温」環境でも問題があるシニアのランニング
低温時にも下記のように様々なリスクがあります。特にシニアは注意が必要です。
- 高温でも低温も、血液粘度上昇+血管反応性変化を介して血栓リスクは増えます。高温の場合は水分補給でリスク低減可能ですが、低温時は水分補給補給だけでは防ぎきれないこともあります(血管収縮型)
- 低温では、血管収縮による血圧上昇のリスクが高まります。特に、シニアは血管の柔軟性が低下しているため、血圧の急激な変化が心臓発作や脳卒中を引き起こすリスクを高めます
- 寒さで筋肉がこわばり、転倒による怪我のリスクも高まります
- 冷たい空気を吸い込むことで気管支が刺激され、ぜんそくの発作や咳が出やすくなります
なぜシニアは特に注意が必要なのか?加齢による身体の変化
一定の心肺機能や筋肉鍛錬がある方は、汗腺機能や循環調節が比較的保たれ、暑さ・寒さへの耐性は高めです。
しかし、シニアの場合、以下のような要因で若い頃より環境適応の幅は狭くなります。
- 血管の弾力性低下
- 交感神経・副交感神経の反応遅延
- 腎臓での水分保持能力の低下
つまり「鍛えていても、年齢による生理的制約は残る」ため、過信は禁物という事です。
適度な運動習慣の為の工夫
シニアの夏場ランニングで「短時間・軽めにして頻度を増やす」というのは、適切なリスク管理の方法の一つです。
夏場のランニング目安は、軽く汗をかく程度の1.5km前後のランにとどめるのがお勧めです。
- 短時間・軽い運動は発汗量が少なく脱水リスクを抑えやすい:血液の濃縮・血栓リスクも低減
- 頻度を増やし累積的な健康効果を図る: 心肺機能や筋力の維持・向上、環境適応力も上がりやすい
- 体調の変化に気付きやすい: 体の異変に気づきやすく、熱中症や過労の兆候を早めに察知可能
注意点:
- 水分補給を怠るとリスクが上がります
- 短時間でも汗をかくほどなら、熱中症への注意は必要です
- 熱中症は個人差が大きいので、体調に応じて中止も含めて判断しましょう
前日の睡眠時間、疲労度、持病の有無など、その日の体調を最優先にすることが最も重要です。「今日は少し疲れているな」と感じたら、無理せずウォーキングに切り替えたり、休息を取るべきです。
ランニングにこだわらない
夏場にもっと安全に運動を続けたい場合、室内でエアコンの効いた環境での軽いジョギングやウォーキング、プールでの水中運動も検討しましょう。
まとめ
冒頭にも記した通り、ランニングの目的は健康のために適度な運動習慣として行います。過酷な環境下でのランニングは健康被害をもたらしますので、ランニングを目的化するのではなく、臨機応変に選択肢を変える知恵が必要です。
ランニングが楽しくて、それでも走りたい場合は、ジムで涼しい環境で走るか、2kmぐらいまでの短距離で少し汗をかく程度にするなど、本来の目的を踏まえた行動選択をしましょう。
運動することも、その意味を考えることも共に大切なことです。安全なランニングを続けるために、ぜひこの記事を参考にしてください
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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