単調なランに飽きたら?還暦から始める、自由気ままなトレラン風の山歩きのススメ

シニアの健康

長年続けてきたランニングも、加齢とともにタイムへの挑戦は徐々に厳しさを増し、前回の記事でご紹介のように、ついには無念の肉離れを引き起こす事態となりました。これを機に、『楽しむ』ことを中心に切り替えた私が発見した、自由で新しい山の楽しみ方をご紹介します。

ちょうど気候が良くなり、昨年末からのふくらはぎの肉離れも完治したタイミングで、近くの里山で、走る割合の多い山登り(トレラン風の山歩き)をしてみることにしました。

やってみると、河川敷や少しアップダウンのあるコースのランニングに比べると、山登り的な要素もある中で、植物や動物や山の景色とのふれあいが多く、状況と疲労度に応じて気兼ねなく歩きも入れて楽しめます。

日ごろの運動不足が気になっている皆さん、一度、トレラン風の山歩きにトライしてみてはいかがでしょうか(安全確保は自己責任で)。

トレラン風の山歩き(ラン、ダッシュ、歩き)の概要

トレランとは

舗装されていない山道や林道、登山道などの自然の中を走るアウトドアスポーツで、ロードランニングとは異なり、自然の地形を活かしたアップダウンや、土、岩、木の根、草地など多様な路面を走ることが特徴です。

登山とランニングが融合したようなスタイルで、全身運動を通じて自然の中で心身を鍛え、達成感を味わえるのが魅力です。ロードランニングと違い、歩きも自由に取り入れられるのが魅力です。

走るだけでなく、急な登り坂では歩いたり、岩場や不安定な場所では慎重に進んだりします。

私のトレラン風山歩きの中でのオススメの登りダッシュ

私の場合、先を急ぐのではなく、景色を楽しみながら、足を止めて写真を撮ることも目的の一つにしています。

トレラン風とはいえ、少しは体力強化も意識したいこともあり、インターバル走のような取り組みとして、ある程度緩やかな登りであったり、少ない距離少しだけ急なところ全速で登り、息が上がったら少しゆっくり歩き、下りは危険がない範囲で走って下ります。

ランニングだと、「できるだけ歩きたくない」という気持ちが働き、義務的に走り続けてしまいがちですが、トレラン風の場合、あまり歩くことに後ろめたさを感じることなく、少し歩いて呼吸が落ち着いたら、目安の目標を決めてダッシュしたり、しばらくゆっくり走り続けたり、いろいろペースを変えて楽しめます。

やってみると、本当に心身ともに楽しめました。

インターバルトレーニングを意識したトレラン風の山歩きの優れた効能

実は、登りでのダッシュを交えた、トレラン風の山歩きは、科学的に様々なエビデンスでその有効性が示されています。

登り坂での高負荷は心肺機能と筋力を集中的に鍛え、その後のリカバリーは次の高負荷に備えるための重要な要素であり、また平坦な場所でのランやダッシュは、スピード持久力やランニングエコノミーの向上に貢献するのです。

  1. 心肺機能(最大酸素摂取量: VO2max)の向上:  (緑文字は参考文献)
    ・インターバルトレーニングは、心臓と血管系に高い負荷と回復を繰り返しかけることで、心臓のポンプ機能を強化し、一度に送り出せる血液量を増やします
    ・また、筋肉への酸素供給能力を高め、酸素を効率的に利用できる体へと適応させます。これは、最大酸素摂取量(VO2max)の向上に直接的に繋がります (Billat, V. L., 2001)
    最大酸素摂取量(VO2max):全身に取り込める酸素の最大量で、持久力の重要な指標で、これが向上することで、より速いペースをより長く維持できるようになります
  2. 乳酸閾値(LT値)の向上:
    ・高強度の運動を繰り返すと、筋肉中に乳酸が蓄積し、疲労を引き起こします
    ・インターバルトレーニングは、この乳酸の生成と除去のバランスを改善し、より高い強度で運動を持続できる乳酸閾値(LT値)を高めます (Jones, A. M., & Burnley, M., 2009)
    ・インターバルトレーニングを取り入れることで、乳酸に対する耐性が高まり、登り坂でのパフォーマンス維持や、その後のランニングへの影響を軽減できます
  3. 筋力とパワーの向上:
    ・短時間の高強度運動は、速筋線維を効果的に動員し、筋力とパワーの向上に貢献します (Sale, D. G., 1988)
    ・特に、坂道での全力ランは、下半身の筋力、特に大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎの強化に有効です
  4. 効率的なエネルギー消費:
    ・インターバルトレーニングは、高強度と低強度の運動を繰り返すことで、体内のエネルギー供給システムを効率的に適応させます
    ・これにより、脂肪燃焼の促進や、グリコーゲンの節約といった効果が期待できます (Brooks, G. A., & Mercier, D., 1994)
  5. 精神的な持久力の向上:
    ・意図的に体に負荷をかけ、それを乗り越える経験を繰り返すことで、精神的な強さや持久力が養われます (St Clair Gibson, A., & Lambert, E. V., 2011)
    ・インターバルトレーニングは、身体的な負荷だけでなく、精神的な挑戦の側面も持ち合わせています

登りダッシュは心肺機能を高め、歩きでの回復は次のダッシュへの準備になります。

注意すべき事、あれこれ

私は、幸いなことに近くにかなりバリエーション豊富なコースがあり、自宅から2-4kmで登り口に到達できますし、その先のルートも今までに随分歩いているので、道迷いもなく走れるのですが、山に入るには、まずルートをしっかり認識することが重要です。

  • YAMAP、ヤマレコなどのアプリで、ルート確認は必ず行いましょう
  • ランを交えるので、ある程度ラップタイムも見たいので、ランアプリも使用したいですね(私はアシックスの「Runkeeper」というアプリのお世話になっています)
  • 山道で走ると転倒リスクが高くなるので、慣れるまでは安全で自信があるところだけ走るようにしましょう
  • 万一に備えて、必ずエイドキット(救急備品)は携行しましょう
  • 必ず水は携行して、こまめに補給して熱中症対策は絶対です
  • 山道を走るので、トレラン用のシューズの準備が望ましいです

現在の私の状況

3月末から週に1回程度のペースで、これまでにだいたい12km程度を3回走ってみて、これまでのランニングより楽しいと感じられるようになってきましたので、今回のご紹介記事を書いてみました。

何より、適度に歩きを入れることで、全く無理感が無く、しかもその間は山歩きとしての楽しみもあり、少し体が楽になったら、再び登りをダッシュするのも新鮮な楽しみとなりました。

私のペースの実績としては、高低差300m程度の低山の往復で、12km程度を2時間以内くらいのゆっくりペースです。トレランとしては、入門~初級レベルだと思われます。

シニアなので、あまりタイムにこだわる必要はなく、気まぐれでダッシュを交えながら、季節の移ろいと景色を楽しむ活動となっています。

これまで同じコースを山歩きしていた時より、むしろ疲れを感じないのは、腕振りをしっかり行い、以前の記事でもご紹介した、臀筋、腸腰筋を意識したランをしていることが効いているのかもしれません。

特に、上り坂のダッシュにおいては、こうした意識は重要な気がします。

まとめ

以前の記事でもご紹介した通り、シニアのランイングはいいことばかりでお勧めですが、単調なランに陥っている方には、トレラン風のランはとてもお勧めです。

数キロ圏内にそうした環境がないと難しいかもしれませんが、平地でもインターバルランはとても楽しめて、おそらく走力の強化にはつながると思いますのでおススメです。

気候が良くなる季節に、トレラン風の山歩きを始めてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

Billat, V. L. (2001). Interval training for performance: a scientific and empirical practice. Sports Medicine, 31(1), 13-31. インターバルトレーニングが運動パフォーマンス向上にどのように役立つかを科学的および実践的な観点から探求した論文です
Jones, A. M., & Burnley, M. (2009). Assessment of critical power, the metabolic cart, modelling and fatigue. European Journal of Applied Physiology, 106(2), 283-292. 運動パフォーマンスの向上や疲労管理に関する科学的理解を深めるための重要な論文です
Sale, D. G. (1988). Neural adaptation to resistance training. Medicine and Science in Sports and Exercise, 20(5 Suppl), S135-S145. 短期および長期の筋力トレーニングにおける神経適応と筋肉適応の相対的な役割を評価するための重要な論文です
Brooks, G. A., & Mercier, D. (1994). Balance of carbohydrate and lipid utilization during exercise: the “crossover” concept. Exercise and Sport Sciences Reviews, 22, 47-83.   運動強度やトレーニング状態がエネルギー基質の利用に与える影響を理解するための重要な枠組みの論文です
St Clair Gibson, A., & Lambert, E. V. (2011). Central governor theory: updating the evidence for neural regulation of performance during exercise. British Journal of Sports Medicine, 45(14), 1103-1115. 運動科学やスポーツ医学におけるパフォーマンス向上の新しい視点を提供する論文です

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