ランニングを続けていると、どうしてもタイムに意識が向きがちです。
私もこの9年間、ずっとタイムに執着していました。
しかし、シニアランナーにとって最も大切なのは、 速く走ることではなく、長く走り続けられる身体を育てること。
そのためには、 「今日は脚が軽い」「今日は足裏に張りがある」「今日はリズムがおかしい」 といった体調の変化を敏感に感じ取ることが何より重要です。
ただし、体感だけでは見落とすことがあります。
加齢により身体感覚が鈍くなるため、 疲労・脱水・フォームの崩れに気づきにくくなると言われています。
だからこそ、 タイムではなく“身体を知るための指標”が必要になるのです。
それが、私が毎回確認している「5つのデータ」です。
はじめに:5つのデータは“身体の状態を知るための補助線”
この5つのデータは、 数字を追うためのものではありません。
自分の身体の状態を客観的に把握し、 安全に・長く・楽しく走り続けるための管理指標です。
私はこれらを使い始めてから、 身体の感覚だけでは見えていなかった事実が数字として見えるようになり、 状態管理の精度が一気に上がりました。
| 指標 | 何を知るか | 必要な機器 |
|---|---|---|
| ① 垂直振動 | フォームの上下動・膝への負荷 | スマートウォッチ |
| ② 接地時間 | 重心通過の質・乗り込みの有無 | スマートウォッチ |
| ③ ピッチ(ケイデンス) | リズムの安定性・オーバーストライドの確認 | スマートウォッチ |
| ④ 運動後低血圧 | 血管の柔軟性・脱水・過負荷の確認 | 血圧計 |
| ⑤ 体重減少率 | 脱水・給水管理の精度 | 体重計 |
④と⑤は家庭用の血圧計と体重計だけで測れます。
ここから始めるだけでも十分意味があります。
第1章|接地時間──フォームの“結果指標”
接地時間は、 「どれだけ無理なく重心が前へ流れているか」 を示す指標です。
接地時間が長い=乗り込みが強い → 膝への垂直荷重が増える → ブレーキが増える
接地時間が短い=重心通過がスムーズ → 地面との不要な接触が減る → 膝への負担が減る
しかし、接地時間は“結果”であり、目的ではない
接地時間を短くしようとすると、 「押す、跳ねる、脚を無理に引き上げる」などの動作で逆効果が生まれます。
正しい順序は、 「楽に走れる → 重心が流れる → 結果として接地時間が短くなる」なのです。

目安
- 初心者・高齢者:0.300秒以上
- 一般ランナー :0.240〜0.300秒
- 上級ランナー :0.200〜0.240秒
- エリート :0.200秒未満
私は現在 0.23秒未満 で安定していますが、 これは「高い重心」「通過の意識」「離地の脱力」が機能した結果に過ぎません。
接地時間の数値にとらわれることなく、動作の再現性の確認の目安として見るのがおススメです。
👉 フォームの詳細については、❷ 重心真下着地だけでは足りない|荷重方向が故障を決める理由【工事中🙇♂️】をご参照ください。
第2章|垂直振動──膝負担の“警告灯”
垂直振動は、 身体の重心が上下にどれだけ動いているかを示す指標です。
跳ねる走りは、 「膝への衝撃、エネルギーロス、ブレーキ増加」 につながります。
逆に垂直振動が小さいほど、 重心が自然に前へ流れ、膝への負担が減ります。
シニアランナーが「膝に優しい走り」を実現するには、この垂直振動をいかに小さく保つかが重要なのです。

目安
- 初心者・高齢者:9〜12cm
- 一般ランナー :8〜10cm
- 上級ランナー :6〜8cm
- エリート :4〜6cm
私は現在 6.5cm とかなり改善しました。
これは上下動を減らそうとした結果ではなく、 荷重方向と重心通過が整った結果です。
私にとって重要だったのは、数値の改善ではなく、月に200km程度走っても、どこにも痛みや違和感が生じなくなったという事実です。
👉 フォームの詳細については、❷ 重心真下着地だけでは足りない|荷重方向が故障を決める理由【工事中🙇♂️】をご参照ください。
第3章|ピッチ(ケイデンス)──走力ではなく“リズム”の指標
ピッチは、 1分間に何歩走るか を示す指標です。
ピッチが低いと、 ストライドが過剰に伸び、 重心より前に足が出るオーバーストライドになりやすく、 膝への負担が増えます。
ピッチは速さの指標ではなく、 フォームのリズムと安全性の指標なのです。

目安
ピッチは、ストライドや速度によりその意味や価値が大きく変わり、単独の値に大きな意味はありません。
あくまでもそれぞれの領域のランナーにおける、相対的な目安としてご覧ください。
- 初心者・高齢者:150〜165spm
- 一般ランナー :160〜175spm
- 上級ランナー :170〜185spm
- エリート :180〜195spm
私は 180〜190spm が安定していますが、 これは走力ではなく「効率的なリズム」が身についている証拠だと思っています。
大切なのは「自分の走りのペースに対してピッチが適切か」という相対的視点です。
ある日の、ある距離、あるペースでのピッチの値に対して、いつもより値が大きく変動している場合、そこには気にすべき変化があるのも知れません。
第4章|運動後低血圧──その日の身体の状態を知る指標
私が毎回測定している独自のデータが、運動後低血圧です。
運動後低血圧は、 血管の柔軟性と、その日の身体の反応を知る指標です。
一定時間、適切な負荷で有酸素運動を行うことで血管が拡張し、適切な給水と負荷であれば、 多くの人で運動後10分の血圧は適度に低下します。
しかし、一方で、これが過剰に低下している時は、「脱水、血液濃縮、過負荷」の可能性があります。
- 普段どおり適度に低下していれば、その日の運動負荷や給水管理は概ね適切だった可能性がある
・末梢血管が運動刺激に反応して拡張している可能性がある
・血管内皮機能が比較的保たれている可能性を示す参考情報になる - 逆に、過剰に低下する日は、疲労や暑熱環境、脱水などの影響を受けている可能性がある
・適切な給水管理と負荷であれば、運動後低血圧はだいたい正常な範囲で低下する
・逆に、過剰に低い値は脱水・血液濃縮(血液ドロドロ)のサインになる

具体例
運動前の安静時血圧〔収縮期血圧(上)SBP/拡張期血圧(下)DBP]が、145/95 mmHgだった場合:
運動後10分 ①115/85mmHg ⇒正常な反応
② 95/70mmHg ⇒危険(脱水・血液濃縮の可能性)
などという見方ができます。
私はこの指標で、「高温多湿の日に、体重減少率2.5%で走った時は危険だった」 と気づくことができました。
走る環境、走る距離、速度、給水管理のどれもがダメだったのです。
私は、運動後低血圧と共に、次に紹介する体重減少率と組み合わせて、その日の身体の調子や負荷の妥当性を確認しています。
👉測定方法や血管内皮機能との関係については、別記事【工事中🙇♂️】で詳しく紹介します。
👉運動後低血圧を利用した血圧改善の取り組みに関しては、こちらの記事をご参照ください。
第5章|体重減少率──夏場の最重要指標
体重減少率は、 脱水の進行度を示す最も信頼できる指標です。
シニアは喉の渇きを感じにくくなるため、 気づかないうちに脱水が進むことがあります。
その結果、「血液濃縮、腎臓への負担増、熱中症リスク」など深刻な状況に陥るリスクがあるのです。

体重減少率=(走る前の体重−走った後の体重)÷走る前の体重×100 、で簡単に計算できます。
目安
〜1% :理想
1〜2% :注意
2%以上:危険(運動中止)
私は夏場は必ず 1%以内 に収めるように、給水管理と、負荷調整を徹底しています。
具体的には、「日陰のコースや時間を選ぶ、給水頻度と量を増やす、走るペースを落とす、距離を縮める、中止する」などです。
しかし、こうしたデータも、身体の感覚を確認するための補助に過ぎません。
より重要なのは、身体が感じるかすかな違和感です。
おかしいと感じたら、走るのを止める早めの判断が最も重要です。
👉熱中症対策や暑熱順化の詳しい説明は、❸ シニアランナーの熱中症対策|暑熱順化・給水・体重減少率の考え方【工事中🙇♂️】、をご参照ください。
終章|データは“身体を知るための補助線”である
紹介した5つのデータは、 タイムを伸ばすためのものではありません。
身体の変化を客観的に知り、 安全に長く走り続けるための補助線です。
私は、 「身体の感覚、前回との違い、自分の平均からの変化」 を大切にしています。
他人との比較ではなく、「昨日の自分」と比較するためのデータとして。
シニアランナーにとって本当に大切なのは、
速く走ることではなく、 10年後も同じように気持ちよく走れる身体を育てること。
まずは、体重と血圧だけでも測ってみませんか。
これまで見えなかった気づきが必ずあります。
関連記事:
❶ シニアのランニングで最も注意すべきは膝の故障|80代まで走るための7つの習慣 【工事中🙇♂️】
❷ 重心真下着地だけでは足りない|荷重方向が故障を決める理由 【工事中🙇♂️】
❺ 私が67歳で月200km走れるようになるまで

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