高血圧がダメとは限らない!加齢と血圧の“生命維持の必然” -薬に頼らず、自分で守る最適ライン-

学び・雑記

60歳を過ぎた頃から、私の血圧は徐々に上がり始め、ついに150mmHgを超えました。
健康診断では当然のように「そろそろ病院で診てもらいませんか」と勧められます。

しかし、ふと思ったのです。
「身体は、意味もなく血圧を上げるのだろうか?」と。

調べてみると、高齢者の血圧上昇は“老化の結果”ではなく、“生命維持のための適応反応”であるという説が近年注目されていることを知りました。
血管が硬くなった身体でも、脳や臓器に酸素を送り続けるために、心臓が圧を上げて頑張っている――そんな視点です。

むやみに血圧を下げることが、かえって認知症リスクや死亡率を高める可能性があるという研究も出ています。
つまり、「高血圧=悪」という単純な構図では語れない現実があるのです。

この記事では、私自身の経験と最新の医学データをもとに、
“血圧が上がる意味”と“無理に下げることのリスク”
そして私たちが今できる「賢い向き合い方」について考えていきます。

厚生労働省と医学会の、高血圧「ダブルスタンダード」が示すもの

厚生労働省は、2024年4月に「特定健康診査・保健指導の実施に関する基準を一部改正する省令案」を公表し、特定健診における医療機関への受診勧奨の高血圧の基準値を緩和しました。これは、過剰な受診を抑制し、医療資源をより必要性の高い対象に集中させる意図があるとされます。

  • 改定前:「収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上」
  • 改定後:「収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上

しかし、その一方で、日本高血圧学会が定める「高血圧治療ガイドライン」における診断基準や治療目標値は据え置かれる姿勢が続いています。

この両者の姿勢の乖離は、一部で「ダブルスタンダード」として指摘されており、その背景には、以下のような構造的な問題が示唆されていると考えることができます。

  • 医療提供側の経済的インセンティブ:医療現場において、高血圧患者の診察や薬剤処方は診療報酬に直結
    ・基準が厳しければ対象患者が増え、医療機関の経営を維持する上で重要な要素となります
    高血圧患者として診察すること自体が重要となるのです
  • 製薬業界との関係性:降圧剤の売上は製薬業界の大きな収益源であり、学会への研究助成や情報提供などを通じて、その影響力が無視できない現状があります
  • 政治的忖度や力学:医療政策の決定には、医師会などの圧力団体からの政治献金や選挙協力といった政治的な力学が作用する可能性が指摘されています

この状況は、「実際には、より緩やかな血圧管理でも多くの人にとって問題ないことが分かってきたが、医療界の既存の構造や経済的側面への配慮から、診断・治療基準の抜本的な見直しには抵抗がある」という解釈もできるのではないでしょうか。

私たちには、「これって、普通に考えておかしいことなのでは?」と感じる感性が求められているのではないでしょうか。この乖離は、医療の「科学的妥当性」と「経済的・政治的側面」のバランスを問う、重要な問題提起なのかもしれないのです。

人の血圧が高くなるのは「必要」があるから!しかし高過ぎもリスク!

高血圧が脳疾患や心疾患のリスクを高めることは、冒頭で述べた通り揺るぎない事実です。しかし、私たちがこの状況をより深く理解するためには、血圧上昇の背後にある身体のメカニズムにも目を向ける必要があります。

身体は生命維持のために仕方なく血圧をあげている可能性!

加齢に伴い、血管は弾力性を失い硬くなり(動脈硬化)、一部の毛細血管は減少・消失し、血管の断面積も狭まります。このような変化が進むと、心臓は脳や全身の重要な臓器へ十分な血液(酸素や栄養)を届けるために、より高い圧力をかけて血液を送り出さざるを得なくなります。この意味において、血圧の上昇は、生命維持のために身体が選択した、ある種の「適応反応」であり、加齢という変化に対する生理学的な「生存戦略」とも解釈できます。

長期的な視点では、やはり高血圧は望ましいものではない:できれば下げたい

この身体の適応自体は、一時的に生命維持を助ける「究極の選択」とも言えますが、長期的に見れば血管への負担が増し、さらなる動脈硬化の進行や臓器障害のリスクを高めるという「望ましくない側面」も併せ持ちます。

つまり、高血圧は必要最低限の生命機能の維持のための究極の選択だとの理解が必要なのではないでしょうか。

しかし、強制的な降圧はリスクが高いことが明らかになってきた

ここで重要なのは、この身体の適応を「無理に、そして画一的に薬で抑制することの是非」です。後ほど詳しくご説明しますが、特定の条件下、特に高齢者においては、強制的に薬で血圧を下げることで、かえって有害事象(死亡率や認知機能低下など)のリスクを高める可能性が指摘されています。

私たちに求められる最適な対応は、この血圧上昇という「身体からのサイン」の意味を理解し、その原因となっている生活習慣を根本的に見直し、身体が自らの力で健康的な状態を取り戻せるようサポートすることだと考えます。

データで判明!:多くの人は加齢に伴い皆、そして多様に血圧上昇する

2004年に大櫛陽一先生らが、全国の約40万人規模の健診データを用いて、男女別・年齢別の血圧分布を詳細に調査しました。この大規模なデータは、以下の二つの重要な事実を示唆しています

  1. 加齢に伴う血圧上昇の傾向:年齢を重ねるにつれて、平均血圧が上昇する傾向があるという事実
    ・これは、日本だけでなく米国の4万人規模の調査でも類似の傾向が確認されており、ヒトの生理的な加齢変化に起因する側面が大きいと考えられます
  2. 血圧の大きな個人差:同じ年齢層であっても、血圧には非常に大きな個人差があるという事実

データについては、J-STAGEにおける「医療保険情報システムからのエビデンス抽出に関する研究」の4ページ目の「図3収縮期血圧の男女別、年齢別基準範囲」の図をご覧ください。

加齢と身体の適応:高血圧に見る生命維持のための「恒常性維持」機能

私たちは、加齢に伴い、血管の弾力性の低下(動脈硬化の進行)、一部の毛細血管の減少、血管の断面積の縮小など、様々な身体機能の変化を経験します。

このような機能低下に対して、私たちの身体は、脳をはじめとする重要臓器への安定した血流を確保し、全身の健全性を維持しようとする「ホメオスタシス(恒常性維持)」という高度な仕組みが働きます。そのため、特定の生理的変化に対応して血圧が上昇する傾向が見られるのです。

これは、「生物学的な必然」とも言える適応現象であり、単なる「病気」としてのみ捉えるべきではない側面を示唆しています。後ほど詳述する大櫛陽一先生らの研究成果は、この視点の重要性を裏付けるものとなるでしょう。

血圧の「正常範囲」定義の難しさ:個体差の理解の重要性

上述の大櫛陽一先生らの大規模な血圧データからは、平均値が年齢とともに上昇する傾向が明確に示される一方で、その分布の「幅の広さ」が極めて重要な意味を持ちます。特定の年齢層における血圧の個人差は、年齢による平均的な上昇幅を大きく上回ることが分かります。

この広範な個人差の存在は、すべての人に一律に適用できる「血圧の正常範囲」を画一的に定義することの限界を示唆しています。つまり、人によって最適な血圧のレベルは異なり得るという事実に、私たちはより注目すべきです。

確かに、人は「基準」に安心を求める傾向がありますが、血圧においては、単一の基準値がすべての人にとって「最適」であるとは限りません。分布図は、年齢層ごとの血圧の「一般的な範囲」を示し、この範囲を大きく逸脱する場合には、さらなる精密検査が必要となる可能性を示唆する「管理限界」としての意味は持ち得ます。

しかし、このデータが提供する重要な視点は、既存の画一的な高血圧基準が、個々人の生理的な多様性を十分に考慮していない可能性があるという、より深い示唆を与えてくれるのです。先ほどの参照資料のグラフ示されている目標範囲に関しては、その意味で少々疑問は感じています。

降圧剤治療の光と影:実は有害事例は結構多い!必要性の見極めが重要

大櫛陽一先生らの研究を含む複数の報告は、高血圧治療における降圧剤の服用が、特定の条件下で予期せぬ有害事象をもたらす可能性があることを示唆しています。これらの研究結果は、以下のような論点を含んでいます。

  • 死亡率への影響:特に高齢者において、過度な降圧は無治療の場合と比較して死亡率を上昇させるケースが指摘されています。例えば、収縮期血圧180mmHgを超える群では、降圧剤治療が無治療に比べ死亡率を大きく上昇させたという報告があります。
    ※ここで重要なのは、ある水準以上の高血圧の状況は、体の反応としてそこまで血圧を上げないと生命維持の点で厳しいというサインであり、無理に下げる有害性を物語っているのではないでしょうか。
  • 脳梗塞リスク:血圧が正常範囲に近い、または中程度の高血圧の群において、降圧剤服用者が非服用者よりも脳梗塞の発生率が高かったという研究結果や、心原性脳梗塞の発症リスクが降圧剤服用時に高まる可能性も指摘されています。これは、無理な降圧が血流速度を低下させ、血栓形成を誘発するリスクを示唆していると考えられます。
  • 認知症リスク:過度な降圧が、特に高齢者において脳血流の低下を招き、認知機能の低下や認知症発症リスクを高める可能性も、国内外の研究で議論されています。JAMAの複数の研究では、高齢者の血圧管理において、高すぎず低すぎない最適な血圧範囲(例えば140~160mmHg台)が、死亡率と認知症発症リスクのバランスで最も低リスクであるとする結果も存在します。
  • 効果の限定性:59歳以下のアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞など、一部の疾患や年齢層においては降圧剤の有益性が認められる一方で、それ以外の組み合わせでは降圧剤の有害性が認められるという研究もあり、その効果が必ずしも万人に普遍的ではないことが示唆されています。

これらの知見は、私たちの身体の生理的な適応としての血圧上昇を、画一的に抑制することの難しさ、そして潜在的なリスクを浮き彫りにします。

降圧剤の服用は、常にそのベネフィットとリスクを慎重に比較検討し、個々人の状態に合わせた「個別化された治療」として行われるべきであることを示唆しています。

高血圧対策で効果があった私の生活習慣の改善取り組み「ベスト3」

私はピーク時には160mmHgにも達してしまった血圧を、何とか130mmHg程度まで下げることに成功し、現在はその定着を目指してるところです。とにかく薬が嫌いなので、医療機関を受診するという選択はありませんでした。

そうして実施した中で、顕著な効果があったと感じる取り組みをご紹介します。

  1. ほぼ断酒レベルの減酒:私は別記事にも書いた通り、典型的な「のんべえ」で40年ほど前から、ほぼ欠かさず毎日、だいたい2合程度を飲み続けてきました
    ・約1か月ほど前から、血圧の為というより薬害としての問題意識からほぼ断酒した結果、期待すらしてなかった血圧の低下が顕著に表れました(140➡130mmHgぐらいの効果)
  2. 食事の内容の見直しと減塩:総合的な取り組みで、ナッツを意識して食べたり、味付けの濃さや、醤油の使用量の軽減や食材の見直しなどさまざま実施したことは、結果ととして(145➡140mmHg程度の効果があった気がします)
  3. 運動習慣の意識的な取り組み:ランニングの頻度を増やし、山歩きを定期的に実施することを習慣化するよう意識的に取り組んだことも、2.との複合効果で結果につながった感じです

平均的には145-150mmHg程度にまで上昇していた血圧は、現在130mmHg前後で落ち着いてきました。とりわけ、断酒以降は、60歳以降一度もなかった125mmHg前後までの降圧も実現できてとても感動したものです。

いずれにしても、出来るところから生活習慣を見直すことで、薬には頼らず自分で許容できる水準に維持できる状況になりましたが、まだ安定しているとは思ってないので現在進行形です。

私の場合は、60歳までの血圧が120mmHg程度だったことから、少し上がりすぎたという意識での取り組みとなりましたが、個人差があるので、絶対値ではなく血圧の変化を気にした方がいいと感じています。

まとめ

いかがだったでしょか。

この記事でお伝えしたかったのは、私たちの身体はこれまで進化の過程で、驚異的な対応力を発揮してきています。そうした機能が体にとって有害な方向に機能しているとは考えられないのです。それもほぼ全ての人で同様に加齢により血圧上昇が起きているということは、生物的「必然だ」と確信するに資するものだと感じます。

医療の世界での真理を知るすべはありませんが、断片的に得た情報は私の確信を裏付けるものだとも感じます。

皆さんはどう感じられたでしょうか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
治療方針の決定にあたっては、必ず医師とご相談ください。
高血圧の原因は多様であり、二次性高血圧の可能性も考慮すべきです。

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