みなさんやそのご家族に、心臓に不安を抱えている方はいらっしゃいませんか。
実は先日、高齢の義父が心不全の症状を呈しており、検査の結果、心筋梗塞と診断され緊急手術を受けることになりました。
緊急手術の際に家族に起きたことは、かなりドラマチックな展開だったので、この点も共有させていただきます。お見舞いから翌日の帰宅迄、私達家族の対応は16時間連続で様々な局面に遭遇したのです。
一度目のカテーテル手術は、心臓入り口の血栓(血の塊)が固くて実施できませんでした。即時転院して即日のバイパス手術の一日でした。
幸い手術も無事に完了し、リハビリも回復も順調で、現在は一安心の状況です。
そして驚くことに、術後1か月程度で、片道1kmほどを歩いて買い物するほどまでに回復して、以前のような元気な日常を取り戻しました。
一般的には、高齢者の場合、リハビリにはある程度の期間を要することが多いですが、いきなりの退院の後、自宅で簡単なリハビリを経て、今年の酷暑の中でも元気に出歩くほどに回復したのです。
心筋梗塞は身近な疾患です。いざという時のための情報として、ご家族が遭遇する様々な状況もお楽しみください。
義父が、心不全の懸念で検査入院
86歳の義父は、この年まで大きな病気をすることもなく、持病の腰痛は有りましたが、年のわりには健康な老人でした。健康診断で心不全の疑いが指摘され、検査入院したのは3月下旬のことでした。
そういえば、三か月ぐらい前から少し体調がすぐれないようなことを言っていました。しかし、娘である妻が「昔からしんどいしんどいって、おおげさやからなあ」とあまり気にかけていなかったのです。
あとで聞くと、実は本当に体調は良くなかったのでした。常日頃、何かあった時に家族が病状を心配してくれるような信頼関係の構築も必要と感じた次第です。
父が検査入院して二日目ぐらいに、「病状が進んでて、緊急の手術が必要と言われた」との電話がありました。
この時にも、「自分で電話してくるくらいやから、どうせまた大げさに言うてるだけや」と言いながら、ちょうど祝日だったこともあり、入院用の手荷物などを運ぶお手伝いとお見舞いのために、実家で荷物と義母をピックアップして病院に向かったのでした。
この先、目まぐるしく事態が急転していくことは、この時は知る由もありませんでした。(ドラマみたい)
急転直下の緊急カテーテル手術、インオペ(手術不可能)
病院に到着すると、先生から慌てた様子で直ぐに家族に集まるように連絡があり、「今すぐ手術しないと、いつ亡くなってもおかしくないくらい危険です」「今からすぐに緊急手術をします」とのことです。
ほぼ家族には選択肢はなく、バタバタと必要書類への記入を促され、あっという間に義父は手術室に消えていきました。
この時の手術は、心臓カテーテル手術で、比較短時間でできる処置の筈でした。
一時間少々で手術は終わり、先生から手術の結果の説明と、その先の選択肢が矢継ぎ早に説明されます。
「カテーテル手術では、血栓が固くて処置が出来ませんでした」
「すぐに心臓バイパス手術が必要な状況ですが、うちの病院では今日は手術できる医師がいません」
「手術できる病院に転院して、心臓バイパス手術を受けるかどうかを今すぐに決めてください」
「一刻を争う状況です」
先生は、義父は年の割に体力有りそうで、心臓バイパス手術には耐えられそうだし、術後は元の生活に戻れるだろうと説明してくださいました。
86歳という高齢の為、このまま天寿を全うするのも選択肢の一つなのかもという思いもよぎりながら、提示された条件では多くの人が選択するであろう「転院して手術をお願いします」という返事をしていたのでした。
落ち着く間もなく転院、そして深夜の緊急バイパス手術へ
転院先の病院からほどなく救急車が迎えに来てくれて、妻は義父と共に去っていきました。そして先生も同乗して転院先の病院に向かい、病状の説明をしてくださいました。頭が下がります。
私は義母を自宅に送ってから病院に向かう事にします。
病院に到着すると時刻は既に18時ごろ。そして、病院に着いて妻に聞かされたのは、「今からすぐに心臓バイパス手術をすることになった。6時間くらいかかるらしい」という言葉でした。
妻は慌ただしく10枚を超える入院・手術の同意書などに記入、署名に追われています。
そして、19時に手術が始まったのでした。
手術中に置き去りの家族は、待合室で待機し深夜を迎える
手術の前には、病院関係者の人から「後ほど看護師からご家族への説明がありますから」と言われました。しかし、1時間ほど待つも特に何の説明もないので、近くのICUの看護師さんに、家族はどうしたらいいのかを尋ねました。
自宅まで帰って待機すると片道30分かかります。「出来れば、何かあった時にすぐこれる場所で待機するか、待合室で待っていてほしい」とのことでした。仕方なく、夕食だけ食べるために束の間の外出をして、念のためコンビニで少しの買い出しをして病院に戻ります。
私たちは車で来てましたし、妻と二人で付き添えっていたのでそれほど問題なかったのですが、電車やバスで来なければならない人や、高齢者の人が一人で同じような状況になると、かなり厳しいのではないかと感じます。
休日という事もあり、他には誰もいない待合室で時間の経過をひたすら待ちます。その間に輸血用のクーラーボックスが二回も運び込まれ少しドキドキします。
手術室の近くは電波が遮断されているようで、ほぼスマホが繋がらず、6時間ともなるとやや退屈な時間が過ぎていきます。
ようやく手術完了の予定時間の25時を迎えますが手術が終わった気配は有りません。25時45分ごろにふと手術室の電気が消えていることに気付きます。
ほどなく先生が出てきて、「何とか予定通り無事に3本の血管のバイパス手術は成功しました。思いのほか血管が痛んでおり、手術で更にダメージがあったかもしれず、順調に回復するかは五分五分かもしれません」との説明受けます。
この後、看護師さんから説明が有ると思うとのことでした。簡単な質問をして、丁重にお礼のあいさつをします。
その後、更に一時間ほど経過したのですが音沙汰がないので、そろそろと思い26時30ごろにICUの呼び出しボタンを押すと、「ちょうどいま術後処置が終わったのでお声がけしようと思ってました」とのことでした(「ホンマかー?」と心の声を呑み込みます)。
ベッドに横たわる義父と再会します。麻酔で眠っていますが血色は良さそうです。多くのチューブが繋がれ、処置に当たる看護師の方々のご苦労を思い知り、家族を相手にする時間もないことが察っせられる状況に、申し訳ない思いと感謝の気持ちが沸き上がります。
祝日の夜に7時間にも及ぶ緊急手術の対応をしてくださった先生や、深夜のICUでとても忙しく対応されている看護師さんを目の当たりにして、日本の医療の質の高さに改めて感動した次第です。
結局、帰宅は28時(翌日の早朝4時)でしたが、還暦の妻はどうしても外せない約束があり、2時間も寝られないまま出勤していきました。流石に午後はお休みをもらったようです。
こうした状況では、家族の健康問題も付随的に考える必要がありそうですね。
驚くほど順調な回復の為、術後16日でリハビリ転院なしで緊急退院
転院前の先生の見立て通り、義父は86歳という年齢にも関わらず、これほどの大きな手術にも耐え、そして術後の回復もすこぶる順調でした。
病院までは、義母の送迎に片道で2時間近くかかることもあり、お見舞いはほぼ2~3日に1回のペースでしたが、義父は行くたびに目に見えて回復し、術後8日でICUから一般病棟に移り、その3日後には酸素も外れて、歩行器で歩き出していました。
緊急病院は、医療体制の面から緊急度の高い患者の受け入れの優先度が高い側面もあり、患者の回復状態次第では早期退院の判断となることがあります。
義父は年の割に回復がかなり順調で、しかも病院内のリハビリでも問題ないくらい元気でしたので、術後16日で退院の運びとなりました。本当はリハビリのための転院を希望していましたが、1週間ほど探してもらっても、心臓手術後のリハビリの受け入れ病院はなかなか見つからなかったのです。
義父が元気過ぎて、先生からの緊急(家族にとって)退院勧告となった次第です。
自宅リハビリに向けて、妻のファインプレー:訪問看護事業者への医師の指示書
順調に退院できたとは言え、これだけの大きな手術後の自宅療養は、高齢の義母には荷が重く、リスクも高そうなので楽観はできません。私たちも離れて暮らしているので頻繁に訪問することも難しかったのです。
緊急医療の病院はどこも、ある程度回復するとそうは長くは入院させてもらえません。患者の家族としては、高齢者だけにリハビリ入院の病院を挟みたかったのですが、前述のとおり心臓手術では受け入れ先が少なく、難しかったのです。
高齢者の場合、退院後のケアとして介護保険や医療保険を利用したリハビリテーションなどが検討されます。
義父の場合は、術後の経過が比較的良好でしたので、介護保険適用によるリハビリの選択も可能でしたが、リハビリ病院を経ずに自宅でのリハビリとなることから、医療保険を利用した訪問看護と理学療法を検討したのです。
そこで、妻は訪問看護の対応が可能な事業者をいくつか調べて、病院の相談員さんに相談し、医師に訪問看護の指示を依頼し、訪問看護事業者と連携して退院後のケア体制を整えました。
何も知識がない状態で、病院の相談員さんや先生に相談しても、訪問看護の受け入れ事業者の調査をしてもらうことや、更にそうした提案をしてもらうことも難しいようです。
結果的にはとても素晴らしい看護師さんにご対応いただけることになり、理学療法士さんによるリハビリを受ける環境も確保でき、緊急時の対応も可能となったのでした。
これを機に、一気に免許返納へ
実は、義父は家族の懸念である車の運転をなかなかやめようとはせず、近所へのドライブを楽しみにしていました。又、買い物が不便なところに住んでいるという事もあり、日常の買い物にも車を手放そうとはしませんでした。
しかし、入院してみて初めて、いつ運転中に意識を失ってしまうか分からない状況だったこととその恐ろしさを理解し、ようやく免許返納の決断をしたのでした。義父の気が変わらないうちに車を廃車処分にし、少し元気になったところで一気に警察署での返納手続きを完了させたのでした。
昨今のニュースで高齢者の事故の情報が流れていますが、特に車を運転する高齢者を持つご家族の方は、運転する方の心不全・心筋梗塞の兆候は、決して見逃してはならないと強く感じました。
その後、体調が回復するにつれて免許返納を後悔する時期もありましたが、現在は状況を理解しています。
免許返納の是非はいろいろな意見がありますが、心疾患や持病の方は返納した方が良いのかもしれません。
高齢であること自体が直ちに免許返納の理由になるとは限りませんが、心疾患などにより意識消失のリスクがある場合は、運転を控えることが安全のために重要です。
心不全と心筋梗塞の原因と症状、運転のリスクについて
高齢者の場合、義父と同じように動脈硬化や血栓で、心臓への血流にトラブルが起きる事例は多いと思います。
重要なのは、近くの親族が、普段と違った息切れや元気がない等、心臓にトラブルを抱えてそうな挙動の違和感を観察し、注意深く見守り、気になる症状があれば医療機関への受診を勧めることが大切です。
高齢者は、体調の変化をうまく伝えられないことがあります。
心不全の症状が出ている状態では、いつ意識を失うか分からないリスクが有ります。万一他人を巻き込んで死亡事故などに至ると、社会的な制裁を受けるのみならず、被害者にも加害者にもその家族にも深刻な影を落とすことになってしまいます。
ご参考までに、心不全と心筋梗塞は下記の病状です。
- 心不全:心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる
- 心筋梗塞:冠動脈が閉塞し、心筋への血流が遮断されることで心筋が壊死する病気
まとめ
日本人は、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は29%に上り世界一だそうです(2022年総務省)。
そして、死因のトップが癌(約25%)で、次いで2位が心疾患(約15%)です。以下、3位が老衰(11%)、4位脳血管疾患(7%)、5位肺炎(5%)という事です(2022年厚労省)。
つまり心疾患は、自覚なき大病として、遭遇する頻度が高くその兆候の観察が非常に重要であることが分かります
日常生活において、心機能に関して僅かでも違和感を感じたら、決してスルーせず、慎重な対応が非常に重要だと感じました。
義父の回復は、お世話になった先生やリハビリの看護師さんたちも驚くほどでした。
もちろんの手術を担当してくださった先生の手腕が大きいと思いますが、義父の生命力も大したものです。
このたびの我々が患者の家族として遭遇した激動の出来事もご参考になればと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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